福島のニュース

<会津身不知柿>原発風評…さらに凍害深刻

被害に遭った柿の木を見る山浦さん。「残っている実を手入れして、少しでも数を増やすしかない」と語る

 会津地方特産の「会津身不知柿(みしらずがき)」が4月に深刻な凍害を受け、不作の危機に直面している。今年は例年の2割程度しか収穫を見込めない農家が多い。東京電力福島第1原発事故の風評被害に遭いながら顧客数が回復してきただけに、生産者は「このままでは顧客に届けられない」と頭を抱えている。(会津若松支局・跡部裕史)

<回復まで数年>
 「いつもならびっしりとつぼみが付いているのに今年は探すのが大変。この畑は全滅だ」
 5月下旬、会津若松市門田町御山の農業山浦啓治さん(65)が自宅近くの畑で嘆いた。身不知柿主産地の御山地区では場所によってばらつきがあるが、芽の約8割が枯れたという。
 原因は4月12日の降霜。放射冷却による冷え込みで発生した。暖冬で例年より約1週間早く出た新芽が凍り、枯死してしまった。
 山浦さんは「秋の霜はよくあるが、春の霜は前例がない。分かっていればストーブをたくとか、薬を使うとか防ぐ方法があった」と肩を落とす。
 渋柿の会津身不知柿は「身の程知らずなほど多くの実を付ける」が名前の由来との説がある。渋抜きすると上品な甘味ととろりとした食感を楽しめ、皇室に献上されることで知られる。
 福島県によると、降霜による被害は会津若松市、喜多方市、会津美里町、会津坂下町の計110ヘクタールに広がり、被害額は1億1000万円。今後の生育への影響も心配で、回復まで数年かかるとみられる。
 県は樹勢の維持に必要な農薬や肥料の購入経費の3分の2を市や町と補助するなどの支援策を決めた。県農業共済組合は、柿を農業共済制度の補償対象にできるかどうかを検討する。

<顧客離れ懸念>
 農家が心配するのは不作による顧客離れだ。原発事故では風評被害で注文が激減し、事故前にあった東京都のデパートとの取引はなくなったまま。それでも顧客数は回復してきただけに凍害の打撃は大きい。
 南御山柿出荷組合の遠藤政孝組合長(63)は「原発事故後は安全性をPRしながら少しずつ顧客を増やしてきた。一度離れると、なかなかお客さんは戻ってこない」と語る。
 会津若松市は被害報告と支援を呼び掛ける市長コメントを載せた顧客向けチラシの作製を検討中。生産者からは「今年は無料で柿を送り、来年の購入をお願いするしかない」との声も漏れる。
 産地は担い手の高齢化という問題も抱える。遠藤組合長は「状況は原発事故のときよりひどいかもしれない。関係機関が一丸となって取り組むしかない」と危機感を募らせる。


2016年06月28日火曜日


先頭に戻る