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<論点聞く>子ども政策 数値目標を

渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)千葉県出身。千葉大卒。百貨店勤務などを経て、07年低所得家庭の子どもに学習支援する「キッズドア」(東京)を設立。内閣府「子供の貧困対策に関する有識者会議」メンバー。52歳。

 参院選(7月10日投開票)では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や憲法問題、環太平洋連携協定(TPP)など多岐にわたる政策課題が問われる。有権者は何を基軸に選択すべきか。論戦の焦点を専門家に聞いた。

◎参院選(3)貧困と格差/NPO法人キッズドア理事長 渡辺由美子氏

 −政府の「1億総活躍プラン」に返済不要の給付型奨学金の創設方針が加わりました。
 「署名活動などで仲間と訴えてきた。重要課題として優先順位が上がった。日本は教育費負担が大きく、親の経済格差が子の学力差につながる。6人に1人の子どもが貧困状態にあり、優秀な子が大学進学を諦めれば国の成長も鈍化する」
 −給付型奨学金は野党も公約に掲げています。
 「子どもの貧困は親世代の問題。『かわいそう』という視点では解決できず、社会構造を変えないといけない。どんな境遇でも安心して学べる社会をつくりたいのか。人気取りで『かわいそうな子』に奨学金を給付するのか。超党派の議員連盟ができたが、各党の姿勢を有権者は見てほしい」
 −子どもの貧困対策大綱など国の取り組みをどう評価しますか。
 「本気なら貧困率削減の数値目標を示すべきだ。同一労働同一賃金の実現や正規雇用の拡大は、目標に向けた政策と位置付ければ説得力が増す。教育を保障し安心して子育てができるメッセージを出してほしい」
          ◇         ◆         ◇
 −社会保障に充てる消費増税は再延期されました。
 「低所得家庭を対象とする私たちの学習会には交通費の工面に苦労し、消費税が2%上がったら来られなくなる子もいる。経済的に厳しい人が現状以上に厳しくならない税の仕組みを考えるべきだ。軽減税率も非常に限定的で、低所得者への恩恵はない」
 「子どもの貧困に焦点を当てると、社会保障の制度設計の妥当性が検討できる。経済協力開発機構(OECD)諸国は公的扶助を加えると母子家庭の貧困率が下がるのに、日本だけはわずかに上がる。日本は税の再配分機能がとても弱い」
 −財源はつくれますか。
 「配偶者控除や第3号被保険者制度は専業主婦がいる世帯を優遇している。今の時代、働かなくていい人はごく一部。その財源を次世代への投資に使ってはどうか。高齢者の眠っている資産を子育て世代に移す仕組みも考えるべきだ」
 「稼ぐ人が減るのに福祉予算が膨らめば絶対的に破綻する。低所得高齢者への1人3万円の臨時給付金は約3600億円。本当に必要か。高齢者福祉の考え方も変えないといけない」
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 −東日本大震災後、被災地で学習支援を始めました。東京との格差は。
 「仙台市と宮城県南三陸町で活動している。今も生活が落ち着かない親は多い。東京と違い、『そんなに勉強を頑張らなくてもいい』という声も聞く」
 「被災地を支える人材育成に積極的に投資しないと地域が沈む。東京は教育の選択肢が多様だ。地方に学びの場を増やすほか、『戻らないから行かせない』と言わず、子どもが東京で学びやすくする工夫もいるだろう」
(聞き手は東京支社・片山佐和子)


2016年06月28日火曜日


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