岩手のニュース

<よみがえりのまち>追加登録へ徹底調査

中世の絵図を手掛かりに山林内を調べる骨寺村荘園遺跡の世界遺産推進部会=4月22日、一関市厳美町

◎平泉世界遺産5年(下)正念場

<厳しい海外の目>
 「彼らに理屈付けは通用しない。もっと現場調査を徹底しなければ、同じ失敗を繰り返すだけだ」
 岩手県一関市厳美町で4月22日にあった骨寺村荘園遺跡の世界遺産推進部会。「平泉の文化遺産」(岩手県平泉町)への追加登録を目指す意見交換の席上、平泉町教委で長年発掘調査に当たってきた八重樫忠郎委員が厳しく指摘した。
 「同じ失敗」とは、2008年の登録延期後の再挑戦で、「骨寺」を含む5遺跡は浄土思想との関連が薄いとして構成資産から外されたことを指す。
 海外調査団の厳格な目を肌で知る八重樫委員には、「復活当選」を目指す一関市教委の調査計画が、やや甘く映った。
 国史跡・骨寺村荘園遺跡は、国道342号沿いの東西約6キロに広がる。中尊寺の僧が奥州藤原氏の初代清衡から与えられた荘園と伝わり、中世の農村風景を今に残す。
 14世紀の絵図に記された「骨寺堂跡」の遺構発見が追加登録を左右する大きな鍵とみられているが、決定的な物証は見つかっていない。本年度の発掘調査に望みをつなぐ一関市教委の担当者は「タイムリミットは迫っている。何とか成果を出したい」と決意を示す。
 除外された5遺跡について、岩手県教委は13年度からの5年間を集中研究期間に設定。最終の17年度末に新たな推薦書を文化庁に提出し、拡張登録への道を開く青写真を描く。

<一定の成果出す>
 一定の成果は上がっている。政庁跡とされる柳之御所遺跡(平泉町)の調査では、世界遺産を構成する無量光院跡とつながっていたとみられる橋の跡が新たに見つかった。扇子を持ったカエルを墨で描いた「カエル板絵折敷(おしき)」の出土も関係者を驚かせた。
 10〜16世紀に北上川交通の要衝となったとされる白鳥舘遺跡(奥州市)でも、中世の城跡が広範囲で確認されている。
 今年8月に海外の専門家を招き、助言を求める現地調査も一つの試金石となりそうだ。世界遺産を所管する県教委生涯学習文化課の佐藤嘉広課長は「平泉の都市造営という新たなコンセプトを打ち出し、世界遺産との関連を証明できればチャンスはある」と見通す。
 遺跡と共に暮らす住民も追加登録の行方を熱い思いで見守る。骨寺村荘園遺跡の地元農家らでつくる一関市本寺地区地域づくり推進協議会は、景観保全や毎年の発掘調査で惜しみない協力を続けてきた。
 協議会の佐藤勲会長は「世界遺産の仲間入りが地域の将来につながる」と、その日が来ることを信じている。

[「平泉の文化遺産」から除外された関連資産]白鳥舘遺跡、長者ケ原廃寺跡(奥州市)、骨寺村荘園遺跡(一関市)、柳之御所遺跡、達谷窟(たっこくのいわや、平泉町)。追加登録には年に1件に限られる文化庁の推薦後、国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査を受ける。


関連ページ: 岩手 社会

2016年06月29日水曜日


先頭に戻る