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<論点聞く>改憲草案 見極めが必要

白井聡(しらい・さとし)一橋大大学院博士後期課程単位修得退学。著書「永続敗戦論」で石橋湛山賞。15年4月から現職。専門は社会思想・政治学。38歳。東京都出身。

 参院選(7月10日投開票)では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や憲法問題、環太平洋連携協定(TPP)など多岐にわたる政策課題が問われる。有権者は何を基軸に選択すべきか。論戦の焦点を専門家に聞いた。

◎参院選(4)憲法/京都精華大専任講師 白井聡氏

 −参院選では、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を改憲勢力が占めるかどうかが焦点です。改憲論の現状、問題は何ですか。
 「自民党は現行憲法を連合国軍総司令部(GHQ)による押し付け憲法だとし、自主憲法制定を党是に掲げる。全面改憲に国民の心理的抵抗が強いことは理解し、部分的な改憲を目指している。戦争や災害時に一時的に政府の権限を拡大する『緊急事態条項』の創設を狙う。だが、東日本大震災の被災地で緊急事態条項がないため憲法が救助や復旧の足かせになったとの声は広がっていない」
 −護憲側の課題は。
 「終戦後、吉田茂首相は国会で憲法9条と自衛権の関係を問われ、自衛のための戦争を否定した。その後、9条が変わることなく、自衛隊が誕生した。この矛盾をなくすため、憲法で自衛戦力の保持を記すべきだとの考えに一理あることは確か。護憲的な立場からの改憲だが、今まで主流な意見にならなかった。護憲側には自衛戦力を明記すれば9条に小さな穴が開き、そこから完全に崩壊するとの警戒感からこの矛盾に取り組めなかった」
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 −集団的自衛権を行使可能とする安全保障関連法が昨年9月に成立しました。
 「戦後日本は多くの面で米国に従属してきたが、9条によって軍事面では従属に歯止めがかけられた。それが安保法制と自民が目指す全面改憲で軍事面でも米国に完全追従する形になる。改憲派の最大のパラドックス(逆説)は、米国の押し付け憲法はけしからんと言う一方、対米従属レジーム(体制)を完成させようとしていることだ」
 −参院選での憲法論議の行方は。
 「最大の争点だが、与党は隠して論戦も控えるだろう。自民党は改憲草案で目指すゴールを示しており、有権者は見極めてほしい。草案では、国家が人間の内面に踏み込まず、価値観を押し付けないとする自由主義と近代憲法の原則があやふやだ。個人の存在を小さくして国家を優先させようとしている」
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 −憲法論議はどうあるべきでしょうか。
 「戦後長く続いた9条と自衛隊の間の矛盾の問題に取り組む必要があるのは確かだ。それでも現政権での改憲には反対だ。憲法は国家権力への制約であるという立憲主義の原則も知らない政治家がいる」
 「伝統と文化、国土を何よりも大切にして守るのが保守主義。国土を汚した福島第1原発事故は保守政治家にとっては最大の痛恨事であったはずだ。だが、政権は経済的な面を優先して原発を再稼働させた。守るべきものが分かっていない劣化した自称保守政治家による改憲は問題外だ」
(聞き手は東京支社・中村洋介)


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2016年06月29日水曜日


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