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<参院選宮城>3世帯 消えゆく集落

参院選の公示日。稲子地区唯一のポスター掲示場に、関係者が候補者のポスターを貼っていた=22日午前10時45分ごろ

 国の経済政策や安全保障政策の是非が焦点となっている参院選(7月10日投開票)は中盤を迎えている。地域にあっては、候補者の口からは語られない課題もある。県内の有権者は政治に何を求めているのか。地域の現場から報告する。

◎地域の現場から/「限界」超えた山里

 人口は県内最少の1500余、高齢化率は県内最高の46.3%(2016年)の七ケ宿町。江戸時代、藩境を守るために仙台藩がつくった集落が、その歴史を終えようとしている。
 福島県境の稲子地区。国道113号を湯原地区で南に折れ、峠道を車で約20分。山深い里で暮らす住民は3世帯4人しかいない。
 峠道と国道399号との丁字路近くに唯一、参院選宮城選挙区のポスター掲示場がある。3候補とも笑顔のそれが貼ってある。

<名前の連呼もなく>
 「町長選や町議選の選挙カーは来るが、国政選挙では来た記憶はない」。01年3月に廃止された稲子行政区の区長を務めた大葉富男さん(89)がつぶやいた。
 終戦直後、100人を超えたという住民は、林業や炭焼きの衰退、車社会の進展に伴い、外に職を求めて急減。小学校の分校も、投票所になった公民館もなくなった。
 大葉さん宅では4年半ほど前から、2人の娘が首都圏から2週間交代で通う。妻の病気がきっかけで、夫婦の世話をしてくれている。買い物は米沢市に住む息子が週に1度訪れ、生活を支える。
 候補者名の連呼さえ聞こえない参院選。「投票したい気持ちはあるが、投票所に行く足がない」と大葉さん。次女の谷村幸子さん(61)は「1票の重みというけれど、これが現実です」と言葉を継いだ。

<自助努力にも限度>
 稲子は豪雪地帯のため、住民は冬、町場に住まいを移す二重生活を送る。町は人口減と費用対効果を理由に、11年12月から峠道の継続的な除雪をやめた。
 「冬の間、動物が家の中に入って荒らすのが一番困る」。稲子で最年少の佐藤富世司さん(70)は苦笑いしつつ、「愛着があり、先祖が残したものがある。ここで終わりたい」と言う。
 佐藤さんは車を小一時間運転し、伊達市の病院に週2回通い、買い物は福島市飯坂町や山形県高畠町へ。地上デジタル放送への移行で宮城県のテレビ番組は視聴できなくなり、福島の地デジか衛星放送を見る。
 町は若年層の定住対策にかじを切ったが、自助努力にも限度がある。佐藤さんは「稲子は近く、なくなるだろう。さみしいが、どうにもならない」と嘆く。
 そして政治に対してこう注文を付ける。
 「地方創生というが、小さなまちの過疎をよく見てほしい。子どもが出て行き年寄りばかりの地域を、国で良くできるものなのかをしっかり考えてほしい」
(白石支局・瀬川元章)


2016年06月30日木曜日


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