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<論点聞く>アベノミクス強化必要

若田部昌澄(わかたべ・まさずみ)トロント大大学院博士課程修了。早大助教授などを経て05年4月から現職。専門は経済学史。51歳。神奈川県出身。

 参院選で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の是非を巡る論戦が展開されている。英国の欧州連合(EU)離脱決定で日本経済への影響が懸念される中、アベノミクスを加速させるのか。軌道修正を図るのか。政策への評価が異なる経済専門家に聞いた。

◎参院選(5完−2)経済政策/早稲田大学政治経済学術院教授 若田部昌澄氏

−消費税の増税延期で、野党は「アベノミクスの失敗が明白になった」と主張しています。
 「政治判断のミスで振り出しに戻った感があるが、失敗はしていない。就業者が大幅に増え、雇用で大きな効果があった。給与の低い新規就業者が多くなった割には平均賃金も全体的に上昇傾向にある。2013年までは低価格を競う外食チェーンで高価格商品が売れるなど、デフレ脱却の兆しがあった」
−政治判断のミスとは。
 「消費税を8%に上げた14年4月の増税だ。ようやくデフレから脱却しかけた時期に一転、消費を低迷させた。アベノミクスは本来、デフレ脱却と経済再生が優先事項だ。経済の完全な回復を待って財政再建に移行するシナリオであり、順番を間違えた」
          ◇         ◆         ◇
−政権は今後、どう対応すべきでしょうか。
 「アベノミクスの原点に回帰するしかない。再増税は延期ではなく、凍結だ。当然、税と社会保障の一体改革の3党合意は経済再生を優先させて見直す。首相が掲げた20年までの名目国内総生産(GDP)600兆円達成こそが、日本経済の完全復活を意味する。そのため、アベノミクスの強化が必要だ」
 「まずはもう一度、量的質的金融緩和を行う。続いて減税が理想だが、無理ならば日銀法の改正だ。政府が目標を決め、それを日銀が実行する枠組みが必要だが、現行の日銀法は役割分担が不明確。国と中央銀行が一体となって600兆円達成に取り組む法の裏付けがあれば、安倍政権以降もアベノミクスの継続が担保され、不安も少なくなる」

−増税は不要ですか。
 「将来的には必要だが、税はタイミングが全て。消費税もGDP600兆円に達したら増税すればいい。好況時の増税は痛みが少なく、税収も上がる。バブル期の消費税導入を除き、政権は常にタイミングを誤り、景気を冷え込ませた」
          ◇         ◆         ◇
−GDP600兆円は非現実的だとの声があります。英国が国民投票でEU離脱を選び、円高や株安などの不安が高まっています。
 「十分可能だ。政府が想定している名目成長率は3.4%で、リーマン・ショックが起きるまでの日本以外の主要7カ国(G7)の名目成長率は5%だ。日本が達成できない数値ではない。規制緩和に加え、科学技術振興への投資など将来性を見据えた政策を進めれば、企業の投資も増え、有効な成長政策となる」
 「『失われた20年』を経て世界では日本より豊かな国が多くなり、日本が成長路線を指向しない理由はない。成長が産業にイノベーションを生み、生活を向上させる。今の日本には貧困問題があり、解決には成長が欠かせない。東北をはじめ地方の活性化にも積極的な成長政策が必要だ」
(聞き手は東京支社・中村洋介)


2016年06月30日木曜日


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