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<論点聞く>成長より秩序の重視を

水野和夫(みずの・かずお)埼玉大大学院経済科学研究科博士課程修了。三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て4月から現職。専門はマクロ経済学。63歳。愛知県出身。

 参院選で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の是非を巡る論戦が展開されている。英国の欧州連合(EU)離脱決定で日本経済への影響が懸念される中、アベノミクスを加速させるのか。軌道修正を図るのか。政策への評価が異なる経済専門家に聞いた。

◎参院選(5完−1)経済政策/法政大学法学部教授 水野和夫氏

−アベノミクスをどう評価しますか。
 「政策として機能せず、国民の暮らしは改善していない。内閣府の世論調査でも、生活の見通しが『悪くなっていく』と答えた割合が、『良くなっていく』を依然上回る。勤労者世帯の貯蓄減少や貯蓄ゼロ世帯の増加を示す統計もある」
−安倍首相は雇用や企業業績の改善を成果に挙げています。
 「労働力人口の減少傾向を背景とした失業率の低下や、団塊世代の大量退職に伴う就業者数の増加など、アベノミクスと関係ない面がある。上場企業が過去最高益となっても配当を求める株主資本主義の力が強く、1人当たりの実質賃金は増えていない。一部の資産がある層が潤う構造だ」
−首相は「デフレ脱却」を強調し続けています。
 「物価が上昇するインフレは本来、『物が足りず、早く買いたい』という社会で起きる。日本は耐久消費財がほぼ100%普及し、人口も減る。政策でインフレを目指すのは無理があり、時代錯誤だ。望んでいる国民も少ないだろう」
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−首相の消費税増税の再延期判断は妥当ですか。
 「2014年に続く延期判断は『ずっと上げられない』と言っているようなもので、国の借金に歯止めがかからない状況をつくっている。野党も先回りして延期を表明したのは最悪の対応だった。政治は本来、増税による短期的なマイナスと、財政危機のような大きな混乱のどちらを選ぶかを問うべきだ」
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−与野党とも「経済成長」を訴えています。
 「金利がほぼゼロになっている現状は、リターンを望める有望な投資先がないと市場が判断していることを意味する。日本の物質的な豊かさは平均的にみれば十分な水準。成長を重視し続ければリーマン・ショックのような反動が起き、中間層以下の人たちにしわ寄せがいくだけだ」
 「これからの政治の役割はゼロ成長であっても経済的な秩序を安定させ、平和な社会をつくること。企業利益の極大化を求めず、資産課税など税制改正を進めて分配に力を入れるべきだ。雇用を重視し、最低賃金引き上げを目指す政策も考えなくてはならない」
−東京一極集中と地域経済の疲弊が続いています。
 「近代資本主義は『より速く、より遠く、より合理的に』を原則に、富を一定の場所に集中させてきた。中央集権に都合のよいシステムだったが、もう限界を迎えている」
 「『より近く、よりゆっくりと、より寛容に』というテーマで経済をつくり直す必要がある。中央主導でアイデアは浮かばない。地方分権を進め、各地域の資源や人材を生かすことが大切。東北も決して小さな経済単位ではないはずだ」
(聞き手は東京支社・小沢邦嘉)


2016年06月30日木曜日


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