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<参院選かすむ政治>生活費切り詰め限界

拡大鏡で預金通帳を見詰める女性。明日への不安は尽きない

◎生活の現場から/細る老後 独り身の不安尽きず

 せっけんや着替えが入ったおけを抱え、昭和の面影を残す銭湯ののれんをくぐる。湯船で疲れた脚をもみほぐすと、帰りは驚くほど楽になるからたまらない。
 仙台市青葉区中江の県営住宅に住む女性(84)は、週3回の銭湯通いが何よりの楽しみだ。
 「でも、毎日は来られないよね」。顔なじみの常連客と、そんな話になる。1回440円。毎日だと月8000円の家賃を超えてしまう。

 夫を30歳の頃に亡くし、女手一つで育てた息子と娘が巣立って久しい。築50年の風呂なし2DKに30年近く、独りで暮らす。
 収入は月9万円の年金だけが頼りだ。家賃や公共料金を払うと、手元に残るのは7万円余り。「独りでも何かとお金がかかる。蓄える余裕がない」
 長年続いた低所得者向けの家賃減免制度が廃止された。家賃は2013年度までゼロだったが段階的に引き上げられ、4月に規定の8000円に戻った。
 「民間賃貸に比べれば格安だけどね…」
 ぜいたくな暮らしとは無縁。仕事を辞めてから20年以上、洋服を買っていない。「たまに下着を購入するくらい。衣類は大事に使えば持つから」。ぎりぎりまで生活を切り詰める。
 消費税増税の先送りはありがたい。「8%でも高いのに、10%になったら大変」。スーパーのチラシでセール品を探すだけでは節約が追い付かない。
 「お金がある人たちは私たちのことをさっぱり考えてくれない」。参院選の争点「アベノミクス」は、デフレ脱却のため物価を上昇させることも目標の一つ。
 「物価がもう少し下がったら、年金暮らしの年寄りも生きやすいのに」

 目下の心配事は「老後」の生活だ。以前、近くに住む娘に「私が動けなくなったらどうする?」と尋ねたことがある。答えは「どうだかな」。
 娘には家族があり、しゅうとめも健在だ。「子どもの世話になりたいけど、かえって気を使う。施設は嫌だし。自分が健康でないと駄目だね」。先のことを考えると、爪に火をともす暮らしから抜け出せない。
 投票には毎回欠かさず行く。今回もそう。「選挙で日々の生活が大きく変わったことはない。でも、これから変わるかもしれないから」。政治に希望は捨てていない。
(報道部・小沢一成)


2016年07月02日土曜日


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