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<名取市長選>閖上の将来像示せるか争点に

閖上港上空から見た閖上地区。中央を左右に流れる貞山堀の手前に水産加工団地、奥にかさ上げ工事などが進む居住区域が広がる

 任期満了に伴う名取市長選(10日投開票)は、4選を目指す現職佐々木一十郎氏(66)と新人で元市議の山田司郎氏(53)が激しい舌戦を繰り広げている。東日本大震災で沿岸部が被災した同市では、閖上地区の復旧・復興が最重要課題だが、市が進める現地再建方針に一部市民の不満がくすぶっている。市はまちの将来像を丁寧に示していく必要がある。(岩沼支局・桜田賢一)

 「この災害公営住宅は(土地区画整理事業地の)一番西側で海から遠いので安心。今、造っている集合型は一番東側なので嫌だ。少しでも海から離れたくて、ここを選んだ」
 6月26日、閖上地区で初めて完成した一戸建て災害公営住宅25戸の見学会。閖上地区で被災し内陸部のプレハブ仮設住宅に住む主婦(78)は入居を決めた理由をそう話した。「海からなるべく遠くに」。同じ思いを抱く元住民は少なくない。
 県道塩釜亘理線を挟む約57ヘクタールを居住区域と定め、現地再建する計画を貫いてきた市。「現地再建は市民も加わった会議でまとめた」と説明するが、内陸移転を強く望む市民と対立。被災者感情への配慮を求める異例の建議と付帯意見を付けた県都市計画審議会を経て、計画にゴーサインが出た経緯がある。
 住民との合意形成に難航した分、計画は大幅に遅れた。事業の起工式があったのは2014年10月。18年3月完工を目指し、県道東側のかさ上げ工事などが進むが、今後は県道自体の工事や現居住者の家屋移転などが控え、完工はずれ込む見通しだ。
 一方、動きだした施策もある。居住区域の海側にある非居住区域では5月、第1期の水産加工団地が県内で初めて完成し、6社が操業を始めた。10月には第2期3社の工場整備が始まる予定で、市は9社で約150人の雇用が創出されるとそろばんをはじく。
 商業施設の整備を求める市民の声に応え、市は基本方針の検討費も予算化した。今後、商業施設集積の在り方が示される予定だ。
 計画人口が約2100人と震災前の3割強にとどまる見込みの新しい閖上地区。高齢化が進む可能性があり「本当に人が住み、にぎわいを取り戻せるのだろうか」と不安視する人もいる。
 津波防災対策の充実などで閖上の居住区域の安心感を醸成し、雇用も確保した上で、いかに若者に魅力的な地区にしていくか。閖上以外の他地区へのてこ入れはどうするのか。市全体の持続的発展は、次期市長の手腕に懸かっている。


2016年07月06日水曜日


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