岩手のニュース

<参院選>内陸避難支援 蚊帳の外

園児との交流を楽しむ高松さん=6日、滝沢市

 「早く新しい家に引っ越して落ち着けますように」。切実な思いを託したのは参院選(10日投開票)の投票用紙ではなく、1枚の短冊だった。

 岩手県滝沢市に住む会社員高松和一郎さん(64)は6日、市内の認定こども園であった七夕行事に参加した。楽しげに願い事を書く子どもたちと一緒にしたためた。
 陸前高田市で東日本大震災に遭い、自宅は津波で流された。勤務先の営業所がある滝沢市に避難した。
 やっとの思いで中古の小さな一軒家を見つけた。妻、息子と3人暮らし。「いずれは自宅を新築するか広い家に引っ越したいが、経済的余裕はない」
 被災後、4度目の国政選挙。岩手選挙区(改選数1)で激戦を展開する与野党候補は「沿岸部の復興を強力に進める」と強調するが、内陸避難者に触れることはほとんどない。
 高松さんの胸には冷めた思いが去来する。「選挙の度に候補者は被災者に希望を持たせることを言うが、結局復興は進んでいない」。投票先は決めかねている。
 「生活再建に困っているのは沿岸も内陸も一緒だ。もっと目を向けてほしい」。内陸避難者支援に取り組むNPO法人「いなほ」の佐藤昌幸代表(37)は代弁する。

 震災後、岩手の沿岸被災地からは被災者が内陸各地に移り住んだ。5年が過ぎても3126人(5月末現在)の内陸避難者がいる。
 このうち現在住む場所での定住を希望する人は5割。県は住宅確保の支援策として、内陸部での災害公営住宅整備を計画。県の意向調査では避難者全体の約2割が入居を希望する。
 盛岡市の団体職員千村真一さん(45)も入居を望む。宮古市の漁師だった。自宅を流され、母を亡くした。盛岡市のみなし仮設住宅で暮らし、市内の被災者支援団体で働く。
 「震災後、選挙が遠くなった」と感じる。被災前は「地元の力になってくれる人を」と地域一丸で特定の候補者を応援した。街頭演説にも足を運び、熱心に耳を傾けた。
 仕事場の真向かいには市役所がある。期日前投票もできるが、なかなか足が向かない。「今は近所付き合いが少ないし、どこで演説しているかも分からない。この人なら、と感じられる候補者もいない」
 安倍晋三首相は「自公政権になり復興は確実に加速した」と繰り返し、野党側は「与党は復興財源を削り、被災地に負担を押し付けた」と応酬する。
 千村さんは生活の実情と選挙で語られる復興との乖離(かいり)に気落ちする。「建物が完成しても、復興が進んでいるなんて言えないと思う」


2016年07月09日土曜日


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