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<参院選争点を歩く>首相たぎる野心封印

街頭演説に拍手を送る聴衆。与野党の改憲論争はすれ違ったままだ=福島市

◎憲法 野党の挑発肩透かし

<態度を一変>
 参院選(10日投開票)は、自民党などの改憲勢力が改憲発議に必要な全議席の3分の2を占める勢いを保ったまま、最終日を迎えた。追い風を背に受けてなお、首相安倍晋三はたぎる野心を封印する。
 「最大の争点は経済政策。エンジンをフル回転して力強く前へ進むのか、暗い時代に戻るのかの戦いだ」
 7日午後、福島市中心部で演説した安倍。16分半を実績アピールと野党への冷笑に費やし、改憲への意欲は一切語らなかった。
 安倍と並んだ福島選挙区(改選数1)の自民現職岩城光英も憲法にはノータッチ。「復興はお任せください」と締めくくった。
 戦力放棄を明記する9条2項や改正要件を定めた96条の改変、首相に超法規的権限を与える緊急事態条項の新設…。2012年12月の政権復帰後、安倍は国会内外で改憲の必要性を発信してきた。
 参院選公示後は態度を一変させた。党の公約集26ページ中、改憲は末尾で触れるのみ。執念を胸にしまい、選挙戦を乗り切るスタンスを崩さない。
 自民幹部も首相に倣う。「1億総活躍、地方創生をやらせてほしい」。6日午後、宮城選挙区(改選数1)の現職熊谷大の応援で仙台市に入った幹事長谷垣禎一は、政権のうたい文句ばかりを繰り返した。
 劣勢に立つ野党陣営は、潮目を変えようと絶え間なく憲法論争を仕掛ける。

<危険性訴え>
 6日夜。共闘する民進、共産、社民、生活の各党幹部や市民団体が集結したJR仙台駅前は、「憲法守れ」の大合唱に覆われた。
 「憲法は変えさせない。日本の平和と民主主義を守る戦いだ」(民進幹事長枝野幸男)「9条を変え、人権も制限しようとするやからは許さぬ」(社民幹事長又市征治)
 野党各党は、消費税増税や原発再稼働など主要政策で「小異」を抱える。改憲阻止は大同団結に欠かせない接着剤となってきた。
 標的は、12年4月に作成された自民の改憲草案だ。自衛権の保有を明記した上で、9条2項を改変して自衛隊を国防軍に再編。海外での武力行使を認める表現が盛り込まれている。
 「9条をなくせば、世界中で戦争する米国の自衛隊派遣要請を断れなくなる。隊員の命を守るための9条だ」。宮城の民進現職桜井充は、保守層も意識した言い回しで危険性を説く。
 挑発を繰り返す野党。土俵に乗らず、参院選後を見据える与党の余裕にいらだちだけが募る。
 「与党が勝てば、首相は必ず一気に改憲を進めてくる。絶対負けられない」。8日午前、JR福島駅前で民進現職増子輝彦と立った代表代行長妻昭が叫んだ。
 戦後日本の大きな転換点になるかもしれない参院選。3分の2を巡る攻防戦は、間もなく幕を閉じる。
(敬称略)


2016年07月09日土曜日


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