広域のニュース

<参院選東北>威勢よい政権に抵抗感

飯尾潤(いいお・じゅん)神戸市生まれ。東大大学院博士課程修了。埼玉大助教授などを経て00年から現職。専門は現代日本政治論。東日本大震災復興構想会議検討部会長、復興庁復興推進委員会委員を務めた。54歳。

 参院選で大勝した与党は、東北の6選挙区(改選数各1)で1勝5敗の惨敗を喫した。東日本大震災からの復興、政権が早期発効を目指す環太平洋連携協定(TPP)への対応など難題を抱える東北と、全国の潮流がねじれた結果をどう読み解くか。識者に聞いた。

◎どう読む与党1勝5敗(上)復興とTPP/政策研究大学院大教授 飯尾潤氏

 −東北で与党が大敗した結果をどう見るか。
 「1勝5敗という数字は目立つが、中身は野党のぎりぎりの勝利だ。小差で競る選挙戦だったので、復興の停滞感やTPPへの不安が最終的に影響した可能性はある。東北が置いてきぼりになっていると有権者が感じ、威勢のいいことを言う安倍政権に対するアンチテーゼという側面もある」

 −被災した岩手、宮城、福島の選挙区は全敗。復興を巡る論争は影を潜めた。
 「復興は与野党が協力すべきで、もともと争点化にはなじまない。ただ、知恵を競い合って、提示するものがあってもよかった。政党同士の戦術や選挙協力に頭が行き過ぎた。震災時は民主党政権で、野党側も批判しにくい面がある。争点がはっきりしない、ふやふやとした選挙だった」
 「被災地は高台などの基盤整備が進み、新しいまちづくりはこれからが勝負。それなのに、震災が過去のこととされていることに被災者は違和感、疎外感を抱いている。くたびれて、野党に大挙して投票するエネルギーもなかったし、与党の動員も効かなかった」

 −選挙区ごとの分析は?
 「宮城は知名度の差が大きかった。激戦だった福島は東京電力福島第1原発事故の対応への不満が表れた。福島から入閣しても法務大臣で、復興大臣ではない。政権の配慮が薄れてきたと感じたのではないか。山形ではTPPがシンボルとなった。東北全体で野党共闘の効果、特に共産党票の上乗せ分は無視できない」
 「市町村別に見れば、必ずしも沿岸被災地の不満が野党に流れたとは言い切れない。釜石市や宮城県南三陸町では与党が勝る。一方、復興のトップランナーと言われる岩沼市でも、遅れているとされる名取市でも野党が制した」

 −政権への影響は?
 「東北の結果が直ちに打撃になることはないだろう。(自民党が大敗し、第1次安倍内閣退陣につながった)2007年参院選とは大きく違い、(与野党が伯仲した)04年参院選にも似ていない。東北は00年ごろから(民進党の前身の)民主党が強かった。今回は基礎体力があった選挙区で競り合い、野党候補が水面から顔を出せたということだ」

 −民進党復活の萌芽(ほうが)が東北にあるか。
 「あるかもしれない。ただ、共産党と協力するために政策をはっきり言わず、次の選挙に勝てるのか。違いを前提に一点で協力する関係をつくるべきだろう」
(聞き手は報道部・庄子晃市、藤本貴裕)

 


2016年07月15日金曜日


先頭に戻る