山形のニュース

<道しるべ探して>スーツ農業 貫く自分流

スーツに長靴、農機を担いで田んぼに入る斎藤さん=山形県川西町

◎とうほく共創 第2部誇り(上)こせがれ

 東北の農林水産業に今、新風が吹き込む。より楽しく、より熱く、よりしなやかに。先細る一方と思われていた道の先に、躍動する若者たちの姿があった。
 下ろしたてのワイシャツに、しゃれたちょうネクタイを締める。上着に袖を通して山形県川西町の農業斎藤聖人(きよと)さん(27)、「出勤」の時間だ。
 一分の隙もないいでたちで向かった先は、稲が青々と伸びる田んぼだった。農作業には、スーツ姿で臨むことにしている。
 田植えや稲刈りともなれば、1着20万円の高級スーツで正装する。もちろん泥だらけになるが、作業着だから気にしない。
 周囲がけげんな表情で見る後継ぎの奇行を、父善一さん(62)は「いいんでねえか」と笑い飛ばした。「何か考えがあってのこと。思い立ったらやってみるのが若者の特権さ」

 スーツ農業は、350年以上続くコメ農家16代目のプライドだった。
 「農業は地味だし、ださいし、もうからない。一つもいいイメージがない」と斎藤さん自身が感じていた。「ならば格好いいイメージに変えればいい。同世代の若い人に面白いと感じてほしい」と発想した。
 就農3年目の2015年3月には妻美友生(みゆき)さん(28)と町の公共施設の一角で、コーヒーやおにぎりセットを出すカフェを始めた。カウンターで自家生産ブランド「家福来(かぶら)米」の注文も受け付ける。
 「軸になるのは、もちろんコメ作り。だが、それだけが農家じゃない。いろんな人生を楽しみたい」と斎藤さんは描く。

 一癖も二癖もある1次産業の若き後継者たちが今、自らを「こせがれ」と称し、全国規模でつながり始めた。宮城県内の農家を中心に約300人が参加する一般社団法人「宮城のこせがれネットワーク」もその一つだ。
 代表理事を務める白石市の志村竜生(りゅうき)さん(30)は10年5月、サラリーマンを辞め、その昔、同級生から「臭い」とからかわれた家業の養鶏業に飛び込んだ。胸中には一つの成算があった。
 一から始めなければならない新規就農に比べ、既に環境が整っている場所への帰農は、成功の条件が備わっている。高齢化と担い手不足にあえぐ農業だが「都会に出たこせがれたちの帰農にこそ再生の鍵がある」と志村さんは確信する。
 家業では、竹炭を混ぜた独自配合の餌で生産するブランド卵のパッケージデザインを一新。こせがれネットでは、生産者が料理で消費者をもてなす「こせがれビュッフェ」などのイベントを企画。
 「若いセンスで自分流に家業をリノベーション(再構築)していきたい」と志村さん。これが農産業の新潮流だ。


2016年07月17日日曜日


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