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<参院選東北>解消されぬ矛盾 諦め感

たかき・りょうすけ 島根県出身。東京都立大(現首都大学東京)大学院単位取得退学。いわき明星大人文学部助教を経て、15年から教養学部准教授。専門は地域社会学。原発避難者への聞き取り調査などを続けている。40歳。

◎どう読む与党1勝5敗(下)原発事故/いわき明星大准教授・高木竜輔氏

 −福島選挙区では自民党現職の法相が民進党現職に敗れた。福島第1原発事故からの復興を巡る議論の影響をどうみる。

 「結論から言えば、復興は争点にならなかった。事故から5年以上がたち、県民の100人中95人は今回の選挙で与野党どちらの候補が勝っても復興の枠組みが大きく変わると思ってはいなかっただろう」
 「候補者本人や陣営が持っていた従来の支持基盤や集票力の違いが勝敗を分けた。現職閣僚といっても法務大臣。そもそも、復興の実績があると有権者は認識していない。想定されていた劣勢を覆すことができなかった」

 −自民陣営は原発政策に触れず、民進陣営は再稼働に対する自公政権のスタンスを批判した。

 「再稼働を巡る議論は多少、影響したかもしれない。ただ、それが全てだったわけではない。再稼働が選択軸だったとすれば、2013年の参院選福島選挙区で自民党候補が圧勝した理由を説明できない」

 −復興や原発が争点にならなかったのはなぜか。

 「候補者の演説を聞いたり、選挙公報を読んだりしても、復興の具体像が伝わってこなかった。第1原発の廃炉推進や中間貯蔵施設の早期整備は、復興ではなく復旧ベースの施策だ。しかも、ほぼ方向性は固まっている。最大の被災地である双葉郡でさえ、住民が広域避難している点を差し引いても投票率は伸びなかった。諦め感が被災者を包んでいるように見える」
 「避難指示が次々と解除される中、賠償格差や放射能への不安など矛盾や問題点は解消されていない。そんな状況下で復興の加速を訴えるのは、被災者の感覚とずれていた」

 −政治は何を訴えるべきだったか。

 「原発事故対応が福島にとって依然として一番の課題であり、復興を取り上げないわけにはいかなかったのは分かる。全県が選挙区となる参院選で、無難な訴えになるのは仕方がない面はあるとしても、事故の影響は浜通りと中通り、会津と地域ごとに違うし、被災者もそれぞれ異なる」
 「復興とは、被災者一人一人に寄り添い、本人の望む形で生活再建を進めることだ。われわれ研究者もそうだが、政治も行政も復旧の先にある長期的ビジョンをまだ描けていない。東日本大震災から6年目の今回の選挙では、少なくとも復興によって実現する福島の具体的な姿を提示してほしかった」(聞き手は福島総局・大友庸一)


2016年07月17日日曜日


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