秋田のニュース

<道しるべ探して>山守り育てる若い感性

チェーンソーを使った伐倒実習で指導を受ける菅岡さん(右)

◎とうほく共創 第2部誇り(下)林業女子

 チェーンソーがうなりを上げる。幹周り2メートルの秋田杉が次々切り倒されていく。大木と格闘するヘルメットの下に隠れていたのは、あどけなさの残る女の子の顔だった。
 国内屈指の林業県秋田に昨年4月、東北初の秋田林業大学校(秋田市)が開校した。2年間のカリキュラム修了後は、県内の林業会社で即戦力として働く。研修生は1、2年生合わせて36人。うち4人が女性だ。
 青森県十和田市出身の菅岡佳奈子さん(19)は高校卒業後、1期生として入校。森林組合に勤める父親が背中を押した。
 「女の子が山仕事?」。周囲は驚くが、実は切り倒しから枝払い、玉切りと何でもこなす高性能林業機械が普及しており、力仕事はそれほど多くない。加えて現場は慢性的な人手不足。技能を習得すれば、就職先は引く手あまただ。

 「危険、汚い、きつい」の「3K職場には違いないが、克服する手段はいっぱいある。林業が男だけの仕事だったのは一昔前の話」と受け流す菅岡さん。むしろ「ストイックで格好いい」と魅力が勝る。
 菅岡さんほど「本格」ではないにせよ、山の仕事を学んだり、体験したりする「林業女子会」が全国各地で催されている。
 東北でも「宮城きこり女子会」などが結成された。来春、職業人としての一歩を踏み出す菅岡さんにとっては心丈夫な応援団だ。

 買い手の言うがままに木を切り出す。そんな受け身の商売から抜け出そうという試みが、東日本大震災の被災地に広がっている。宮城県南三陸町の林業会社専務、佐藤太一(たいいち)さん(31)が先頭に立つ。
 山形大大学院で宇宙物理学に没頭し、家業と無縁の生活を送ってきた12代目は「林業なんて研究の片手間にだってできる」と高をくくっていた。
 震災の津波で実家も会社も流され、やむなく帰郷。そこであらためて木を切って森を守る営みの奥深さを知った。同時に、古い産業には新しい工夫の余地があると気付く。早速、動いた。
 昨年10月、環境に配慮した森林管理の国際認証(FSC認証)を町内の森林所有者と共同で取得。6月には岩手県住田、岩泉両町の森林所有者とFSC認証の連携組織を発足させた。
 FSC認証を取ることで海外に販路を開く狙いもあるが、佐藤さんはむしろ「森林の価値が木材の価格を決定する世の中に変えたい」と意欲を燃やす。
 みずみずしい感性が、東北の山々を守り育てる。


2016年07月20日水曜日


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