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<橋野鉄鉱山>世界遺産1年 高い誘客効果

橋野鉄鉱山の高炉跡を清掃する栗林小の児童=6月28日

 岩手県釜石市の橋野鉄鉱山が「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界文化遺産に登録され、1年が過ぎた。東日本大震災の沿岸被災地で誕生した初の世界遺産。誘客効果は依然として高く、市は見学者の市内周遊による観光振興に力を入れる。「鉄のまち」の原点となった郷土の誇りを教育に生かす取り組みにも期待がかかる。(釜石支局・東野滋)

 冬季休業を終え、4月に再開した橋野鉄鉱山インフォメーションセンター。4カ国語の音声ガイド機器を新たに導入し、ガイドも常に配置する。
 5月の来館者は4867人と前年より約1500人減ったものの、市の観光施設「鉄の歴史館」には約700人増の2920人が訪れた。市観光交流課の菊池公男課長は「大型連休は天候が悪く、釜石に来た上で歴史館に流れた人が多かったようだ。橋野鉄鉱山が人を呼び込む力は十分ある」と分析する。

<不備を逆手に>
 2015年に市内を訪れた観光客は、前年比11万4343人増の52万6618人。波及効果の高い宿泊客も22万1302人で、6万6235人増えた。
 橋野鉄鉱山はJR釜石駅から約30キロ離れた山間地で、公共交通機関はない。市は交通の不備を逆手に取り、別の観光資源も回ってもらう滞在型観光で宿泊客を増やす戦略を描く。
 4月には鉄の歴史館とのスタンプラリーを始めた。台紙の裏面で釜石製鉄所に原料を供給した「旧釜石鉱山事務所」を紹介する。橋野鉄鉱山と歴史館は約30キロ、歴史館と鉱山事務所は約15キロ離れている。
 市世界遺産室は「3カ所を見れば製鉄の全体像が理解でき、釜石の歴史も深く知ることができる。ぜひ宿泊して、セットで訪れてほしい」と説明する。

<児童がガイド>
 教育に活用する動きも広がる。栗林小(児童48人)は15年、地域清掃活動の場所を学区内の橋野鉄鉱山に移した。5、6年は総合学習で高炉跡の概要や建造の歴史的背景を調べ「ちびっこガイド」を目指す。同11月に実際に現地で見学者を案内した。
 6年の栗沢和也君(11)は「身近な場所に世界遺産があるなんてすごい。大切にし、もっと詳しくなりたい」と目を輝かせる。
 市教委は今年4月、全14小中学校に授業で橋野鉄鉱山を見学するよう要請。岩手県教委も「平泉の文化遺産」だけだった世界遺産の出前授業に橋野鉄鉱山を加え、市内3小学校が受講する。
 佐藤功市教育長は「高炉建造、近代製鉄の成功を支えたのは、失敗しても諦めず人のために力を尽くす釜石の人々の精神性だ。子どもたちに受け継がせるため、橋野鉄鉱山は素晴らしい教材になる」と語る。

[橋野鉄鉱山]現存する国内最古の洋式高炉跡3基、鉄鉱石の採掘場と運搬路などで構成。1858年、盛岡藩士大島高任(1826〜1901年)の指揮で建造された。大島はこれより前、釜石市内で鉄鉱石を原料に洋式高炉を用いた銑鉄の連続生産に成功。近代製鉄業の礎を築いた歴史的価値から「明治日本の産業革命遺産」に追加され、2015年7月8日に世界文化遺産に登録された。採掘場と運搬路は普段は立ち入りできない。所有者は3者で、高炉場の中心部を釜石市、採掘場の中心部を日鉄鉱業が有する。残りと運搬路は国有林。


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2016年07月21日木曜日


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