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<その先へ>里山の花 復興の種に

ミズバショウや桜、山野草を植えた水田の前に立つ大久保さん

◎農業 大久保金一さん=福島県飯舘村

 東京電力福島第1原発事故後の避難指示が来年3月末に解除予定の福島県飯舘村で、農業大久保金一さん(76)が古里の自然を生かした桃源郷づくりに励んでいる。田畑に桜や山野草を植え続ける大久保さんが思い描くのは、カタクリが咲く里山まで続く交流の場づくり。「多くの人が集い、村の復興になる」。ただ、そこに必要なのは安全な環境。山林の汚染土を放置する国に本格除染を訴える。

 大久保さんの家と1.7ヘクタールの田畑は、同村小宮の山あいにある。2011年3月の原発事故後に荒れた水田の一角で、13年からNPO法人ふくしま再生の会と稲作試験を行ってきた。来春以降は「食べる分の野菜を作り、田畑は花でいっぱいにするつもり」と言う。
 「原発事故が忘れられぬよう、毎年咲く桜を残したい」。そんな大久保さんの希望で、再生の会や支援者が2年前から水田に桜の苗木を植えており、来年には計500本に増える。
 古地名の牧場(まきば)にちなんだ「マキバノハナゾノ」という計画だ。「山野草も植えて飯舘本来の自然の豊かさ、それを奪った原発事故を大勢の人に伝え、全国から見に来てもらえる場にしたい」
 終戦後、家族で原野の開拓に入り、里山の花に親しんだ。各地に山野草好きの仲間もでき、「原発事故後、コメなどを送ってくれている」。恩返しに招きたいと、エゴノキやヤマウツギ、ヤマアジサイなど1000本余りの苗木も育てる。

 水田の1枚に水を張り、ミズバショウも植えた。家の周りのスイセンは約10万株に上る。夢は福島市渡利地区にある花見山のような桃源郷だが、問題は里山の除染だ。
 環境省の事業で大久保さん宅の除染作業は5月に始まったが、田畑に接する山林は表面の堆積物が除去されただけ。農地のように深さ5センチまでの土の剥ぎ取りはなされず、「放射性物質を浴びた5年前の落ち葉が、腐葉土となって放置されている」。
 カタクリ山と呼ぶ自生地の里山が近くにあり、毎年5月に支援者らの見学会が催される。国は本年度、福島県の強い要望を受け森林のモデル除染を行う方針。大久保さんは「村のシンボルになる交流の場として、1周約3キロの散策路を含め山林を除染してほしい」と訴える。
 母コトさんが昨年11月に98歳で他界し、1人暮らしになった。それまで「家に戻りたい」と言う母と共に避難先と自宅を行き来しながら、花を育ててきた。
 「花は人生の希望。里山から切り離されたままで、飯舘村の再生はない」
(寺島英弥)


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2016年07月25日月曜日


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