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<クマ出没>過疎化で生息域拡大

青井俊樹(あおい・としき)東京都生まれ。北海道大大学院農学研究科博士課程単位取得退学。00年岩手大農学部教授。16年定年退官。現在もフィールド調査などを続ける。

 東北各地でクマの目撃が異常多発している。鹿角市では5、6月、山菜採りの男女4人がクマに襲われて死亡する深刻な事故が発生した。目撃数が増えている原因やクマの被害を防ぐ対策を、野生動物管理学が専門の岩手大名誉教授青井俊樹さん(66)に聞いた。(聞き手は秋田総局・藤沢和久)

◎岩手大名誉教授 青井俊樹氏に聞く

<怖いと学ばせる>
 −クマの生息状況はどのように変化しているのか。
 「ほとんどの地域で生息域が拡大している。東北では青森県が顕著で、津軽半島の先や八甲田山にまで広がっている。生息数も増加傾向にある」

 −原因は何か。
 「過疎化や高齢化で里山から人がいなくなり、クマをはじめ野生動物にとって非常に住みやすい環境になっているからだ。山奥も林業不況でスギなどの人工林が間伐されずに暗い林が増えた。クマの餌となる実がなる広葉樹が育つ場所が減っているため、里に下りるようになった」

 −クマよけに鈴やラジオで音を出すことは逆効果になるのか。
 「山で人間の存在を知らせること自体は間違いではない。ただ、鹿角市の事故のように人を襲ったクマが寄ってくる可能性はある。ケース・バイ・ケースだ。鹿角の現場を視察した際、1人で入山する人を見掛けた。事故が起きた周辺には絶対に入るべきではない」
 「普段入山するときは大人数で声を出し、鈴を携帯する。なたやクマよけスプレーも有効だ。クマに人間は怖い、と学習させることが必要だ」

<里近付かせない>
 −夏休みに入り、子どもが山に入る機会が増える。
 「注意が必要なのは山よりも里だ。東北で出没や農作物被害が増えるのはお盆すぎからの約1か月間。山の餌が減る一方で、里のリンゴやトウモロコシが収穫期を迎えるからだ」

 −里で取るべき対策は。
 「山際で作物を栽培する場合は電気柵で囲い、里に下りて来ないようにする。今年はブナが凶作で、9月以降も出没が続く可能性は高い」
 「クマは収穫しない柿や、野積みした売れない作物などを食べて味を覚えてしまう。電気柵の設置や廃棄農作物の適切な処理など、クマを寄せ付けない里づくりに地域ぐるみで取り組む必要がある」

 −今後、クマと人間はどう付き合うべきか。
 「目撃数が増えていることを、頭数の増加や餌不足の問題だけで片付けるべきではない。大切なのは、里山など中山間地域が野生動物の生息域になり、それは過疎や高齢化、一極集中の結果だということ。根本的な解決策は山村だけでなく、社会全体で考えるべきだ」


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2016年07月25日月曜日


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