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<避難解除>楢葉で和牛繁殖 希望の再開

楢葉町で和牛の繁殖を再開した渡辺さん

 東京電力福島第1原発事故で全町避難し、昨年9月に避難指示が解除された福島県楢葉町で、畜産農家の渡辺秀幸さん(55)が黒毛和種の牛の繁殖を再開した。楢葉町には原発事故前、約40戸の和牛繁殖農家があったが、再開は初めて。
 渡辺さんは事故前、和牛11頭を飼育していた。「町では若手の自分が先陣を切ろう」と、牛舎を修繕するなど今春に再開準備を本格的に開始。7月6日と25日に生後10カ月の雌計5頭を購入し、飼い始めた。
 年内は町の飼育実証事業という位置付けで、牛の血液やふんを調べ健康状態や安全性を確認する。8〜9月に種付けする予定。当面は牧草やわらを購入、今秋に牧草の栽培も再開する。
 事故前に1頭40万〜50万円だった子牛価格が高騰し、今回は75万〜90万円で購入した。1頭当たり町から30万円、県から12万円の補助を受ける。
 渡辺さんは町が立ち入り禁止の警戒区域になった2011年4月22日の前日夕、11頭を牛舎から放した。「餓死だけはさせたくなかったので、放すしかなかった。夜は牛舎に戻っていたようだ」。牛は同年秋に処分された。
 新たな5頭が牛舎に入り、渡辺さんは「やっとこの日が来た」と話す一方で、「ゼロからのスタートで、子牛の出荷まで順調でも2年かかる。期待と不安が半々だ」と打ち明ける。
 現在は避難先のいわき市と行ったり来たりの生活だが、自宅の修繕が終わる来春には完全に帰町する予定。原発事故前に目標に掲げていた30頭への規模拡大をもう一度目指す。
 渡辺さんは「実現には牛舎増築などを含め4000万円以上かかる。原発事故で被災した農業者向けの支援制度は手薄で、リスクは大きいが、再開したからには、良質な子牛を多く生産し、町の農業再生に貢献したい」と話す。
 町によると、町内では来春までに、農業法人と、酪農から切り替える農業者が和牛繁殖に新規に取り組む予定という。


2016年07月29日金曜日


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