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<盛岡バスセンター>消える昭和に「待った」

9月末に営業を終え、11月に解体が始まる盛岡バスセンター
閉店したバスセンター内の藤原売店。ピーク時は1日約800人が利用したという

 1960年に建設され、昭和の雰囲気が漂う盛岡市中ノ橋通の路線バスターミナル「盛岡バスセンター」が9月末に営業を終える。入居するレトロな売店は徐々に姿を消し始めた。運営会社による解体後、市は跡地を買い取り市民向けの複合施設を整備する。市民からは保存を求める声が出ており、有志団体が市議会に建物取得を陳情するなど活動を続ける。(盛岡総局・松本果奈)
 蜂蜜、大学芋、コーヒー、たばこ、切手…。多彩な商品が並んでいた棚が今年6月末、空になった。バスセンター開業直後から1階乗車券売り場正面にあった「藤原売店」が閉店した。
 多くの地域住民が利用し、店長の松岡正さん(75)は「店は自分の家のようなものだった。お客さんのおかげで毎日の営業が楽しかった」と振り返る。

<議会に陳情>
 同店でよくコーヒーを飲んだという岩手県矢巾町の会社員鈴木寿信さん(50)は「仕事帰りの一杯が楽しみだった。昭和の雰囲気がなくなるのはさみしい」と名残惜しそうに話す。
 3階建てのバスセンターは自動車ターミナル法適用の全国第1号施設。敷地面積は約2800平方メートルで、平日は26路線427便が発着する。入居する店舗は開業当時の姿をとどめ、人気の観光スポットだ。
 運営会社「バスセンター」が今年3月に解体を決め、市は跡地を約5億円で買い取る方針を固めた。バスターミナル機能は維持し、にぎわいを生む複合施設の整備を検討する。完成は早くて2020年の見通し。
 近隣住民や学識経験者ら約50人でつくる「盛岡バスセンターから考える会」は6月、市が運営会社から建物を取得した上で、保存を視野に入れながら活用法を市民と話し合うよう市議会に陳情した。同会共同代表で、盛岡市の建築家渡辺敏男さん(65)は「地域の歴史を伝える建物で、モダンなデザインは観光施設としても価値がある。壊すのは簡単だが、建物が持つ物語を大切にすべきだ」と強調する。

<「取得ない」>
 ただ、市議会で「保存」の議論が高まる気配はない。「今は機能がターミナルと商店に限られている。新たな複合施設は市民の交流拠点やマンションなど活用の幅が広がる」(ベテラン市議)との意見が大勢だ。
 谷藤裕明市長は「運営会社が改修を模索した上で安全確保のため解体を決めた。ターミナル機能の確保が第一。現在の建物を取得する予定はない」と語る。
 渡辺さんは建物を残す方策として、3階部分だけを解体し、1、2階は残すことを提案する。改築費は3〜4億円と試算し、跡地取得費より安く済むという。
 同会共同代表で岩手県立大の倉原宗孝教授(地域環境計画)は「センターは利用者や地元商店街が生活の一部として時間を共有してきた空間」と指摘。「保存を話し合うことは、市のまちづくりの方向を市民が考えるきっかけにもなる」と議論の盛り上がりに期待する。


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2016年08月09日火曜日


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