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<土と語り合う日々>大胆で繊細 美を追求

まだ熱が残る作品を登り窯から取り出す村上さん。冷めるとともにさらに色が映えていく=7月5日、栗原市金成

 宮城県栗原市金成大久保沢で大久保窯を構える陶芸家村上世一さん(79)=二戸市出身、河北工芸展顧問=が開窯して今年で50年を迎える。戦後、県内で初めて本格的に個人窯を開いた村上さんは、東北陶芸界のパイオニア的存在だ。理想の土を求めてたどり着いた栗駒山麓で作品を焼き上げる。栗原の自然に向き合い、作陶を続ける村上さんの工房を訪ねた。(若柳支局・横山寛)

◎宮城栗原・大久保窯の50年(1)挑戦

 紺色の作務衣(さむえ)を身に着けた村上さんは、厳しい表情で工房の椅子に腰掛けていた。両膝に載せた手の指に力が入る。7月5日朝、窯出しを前に緊張感が漂っていた。
 「ちゃんと焼けているかどうか…。いつもどきどきしたり、不安になったりする。ずっと同じことの繰り返しだ」。自嘲するかのような語り口に、陶芸の奥深さがにじみ出る。
 村上さんは1966年秋の開窯後、国展や日本伝統工芸新作展など多くの公募展で入選を果たした。宮教大やカナダ・バンクーバーのアートスクールで講師を歴任。徒弟制で指導した弟子4人が窯を開いている。

<出来に一喜一憂>
 この日、まだ熱がこもる登り窯から取り出したのは、本焼きすると白色になる上薬(白釉(ゆう))を掛けたつぼ。「狙っていた白が出た」。満面に笑みが浮かぶ。白肌の下から浮かび上がるのは、「村上作品の証」ともいえる草紋だ。花の赤が生命感を醸し出す。
 窯出ししながら一つ一つの出来栄えに一喜一憂する。目尻を下げて喜んでみたり、表情を曇らせて首をかしげてみたり。真剣に土に向き合っている現れか。
 全体に鉄釉を掛けた後、縁に白釉を掛けてなまこ流しにした大鉢、皿など作品が次々に取り出される。どれもどっしりしていて力強い。
 ギャラリー「杜の未来舎」(仙台市)を営み、東北の窯元を訪ね歩く斎藤久夫さん(64)は、村上さんの作品を「皿や茶わんなど、どれも日常生活の中にすーっと入ってくるのが魅力」と評する。
 例えば湯飲み。大ぶりで厚みがあるが、手にぴたりとなじむ。何げない器でも、トマトやサクランボを盛ると「待ってました」とばかりに映える。草紋のタッチは、いま筆を入れたかのような躍動感がある。
 村上さんは、人間国宝になった陶芸家浜田庄司の高弟滝田項一さん(89)に師事した。浜田とともに民芸運動を推進した陶芸家河井寛次郎に感銘を受けた。

<破天荒な陶芸家>
 「それでも村上作品は不思議なほど、誰かのどんな作品にも似ていない。破天荒な陶芸家だ」と斎藤さんは解説する。
 元東北大教授の英国人デビッド・ヘイルさんも74年発刊の著書「東北のやきもの」の中で、村上さんの作品を「非常に独特」「大胆かつ繊細な魅力を持つ」と関心を寄せた。
 村上さんは喜寿を過ぎた今も、試行錯誤しながら陶土や上薬の調合を繰り返す。まだ見ぬ新しい作風、新しい美しさがあるはずだ。そう信じて作陶に挑む。


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2016年08月11日木曜日


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