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<特例宿泊>大熊 夜の自宅5年5カ月ぶり

自宅で愛犬2匹と過ごす菊地さん。「ずっと暮らせるようになってほしい」と願う

 東京電力福島第1原発事故で全町避難する福島県大熊町で11日、夜間の自宅滞在を認める「特例宿泊」が始まった。第1原発が立地する大熊、双葉両町で初めて。申し込みはわずかだったが、住民は事故から5年5カ月ぶりとなる自宅での夜をくつろいで過ごした。
 対象は居住制限区域の大川原地区が130世帯361人、避難指示解除準備区域の中屋敷地区が11世帯22人。宿泊できるのは16日までで、両地区の計13世帯40人が申し込んだ。
 大川原地区の菊地永子さん(70)は毎週、会津若松市の仮設住宅から家の片付けに来ていた。「これまではせわしなく帰ったが、今日はゆっくりできる。夕食に天ぷらを作りたい」。長男、愛犬2匹と5日間泊まる予定という。
 「5年5カ月は長く感じた」と振り返ったのは中屋敷地区の三津間義一さん(62)。いわき市の仮設住宅から毎日、5頭のヒツジの餌やりに自宅に通い続けた。「やっと古里で落ち着いて過ごせる」とほっとした様子だった。
 ただ町の将来は見通せない。避難先の町外に家を建てた町民が増えた。町内の家屋荒廃を理由に特例宿泊を見送った世帯もある。
 町内全3893世帯1万697人(5月現在)のうち、約96%の3752世帯1万314人の自宅は放射線量の高い帰還困難区域にある。
 大川原地区の佐藤右吉さん(77)は「町の復興が見えず、特例宿泊開始を素直には喜べない」と言う。今回は自宅に親戚と泊まって墓参りをするが、いずれは「(帰還した住民同士で)一緒に酒を飲めるようになればいい」と期待した。
 特例宿泊開始について渡辺利綱町長は「復興に向けた大きな一歩。今後は『帰りたい』と望む町民が一人でも増えてほしい」と述べた。


2016年08月12日金曜日


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