宮城のニュース

震災で移住「墓じまい」一気に現実味

法山寺の永代供養墓。震災後、被災者からの相談が増えている=石巻市

 東日本大震災後、被災した沿岸部から仙台圏など内陸に移住した高齢の被災者が、古里に残した墓を今後どうするか頭を悩ませている。震災後6度目のお盆を迎え、遠距離の墓参は年々負担となり、永代供養などを検討する人も少なくない。寺院の関係者は、少子高齢化や人口流出で震災前から徐々に顕在化していた「墓じまい」という現象が、震災でさらに進むとみる。(報道部・菊池春子)

<片道2時間半>
 「元気なうちは墓参りに行きたいけれど、遠くて疲れてしまって。いずれは永代供養を頼むしかない」
 宮城県南三陸町の自宅が被災し、仙台市宮城野区の災害公営住宅で1人で暮らす女性(85)は、切ない胸中を打ち明ける。
 墓には震災前に亡くなった夫や先祖が眠る。南三陸町の災害公営住宅に入って墓を守ることも考えたが、年齢を思うと仙台市に住む娘の近くに身を寄せざるを得なかった。
 お盆と彼岸には、娘の車で片道2時間半かけて南三陸町へ出向く。毎回、「帰ってきた」と感じるが、この2年ほどは行くだけで一苦労。墓掃除は昨年から、地元の業者に依頼している。墓じまいが、震災で一気に現実味を帯びた。

<改葬も選択肢>
 永代供養は一般的に、墓参りをする身内がいない人の遺骨をまとめて合葬し、寺が管理する。先祖代々の墓石は整理され、なくなることになる。
 「古里のお墓を終わらせるのはつらい」と気仙沼市の実家の墓を巡り悩むのは、同市で被災し夫婦で仙台市泉区に移った女性(64)。永代供養を頼むか、墓を移すか。遠距離の墓参りが難しくなる将来を見据え、墓園を見学するなどして検討を続けるが、なかなか結論を出せないでいる。
 移住先に墓を移す改葬を済ませた被災者もいる。気仙沼市から、息子の住む仙台に移った女性(72)は2013年暮れ、墓を近くの墓園に移した。片道3時間の墓参の負担は大きく、悩んだ末、「少しでも近くで供養しよう」と決断した。

<寺に相談続々>
 墓の維持が難しくなるケースは少子化や人口減少の影響で以前からあったが、震災後、より目立つ。石巻市によると、震災前水準の10年度、本庁が扱った改葬申請許可件数は40件程度だったが、11〜15年度は年間185〜75件に増えた。
 被災地の寺には、檀家(だんか)からの相談が相次いでいる。
 石巻市の法山寺は檀家の8割が被災。うち2割は市外に転出した。北村暁秀副住職(43)は「うちはまだ動きが少ないが、震災後、遠方に移った人を中心に永代供養の相談が多い。生活環境が変わり、考えざるを得ない人が増えた」と話す。
 既存の宗派に所属せず仏事の相談を受ける「みんなの寺」(仙台市泉区)が設ける共同墓では、家名などを刻める個別型の永代供養墓が人気を集めている。
 天野雅亮住職(48)は「墓は故人や家族、故郷にどう向き合うかという思いの象徴。個別の墓の形を残したいというニーズは大きい。寺側も思いに沿う新たな墓の在り方を考えるべきだ」と指摘する。


関連ページ: 宮城 社会 焦点

2016年08月13日土曜日


先頭に戻る