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<絹の道と東北経済>急ピッチで役割変化

750万人が暮らす長春市。スーパーやマンションが立ち並び、地下鉄建設や道路の高架化など都市化が進む

◎対中交流のあした(中)巨大市場

 安い労働力を提供する「世界の工場」は「巨大な消費地」に変わりつつある。

<順調な個人消費>
 「13億人の国民がいて、所得が上がっている。個人消費は当然順調。生活用品の売れ行きはいい」
 中国に8カ所の工場を構えるアイリスオーヤマの大山健太郎社長(71)が市場としての魅力を語る。
 東北部の遼寧省、東部の江蘇省にある工場で家電や生活用品を生産、販売する。2017年夏には南部の広東省に新工場を設ける予定だ。急拡大するインターネット販売に対応するため、製造拠点をバランス良く置き、物流の効率化を狙う。
 中国政府が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の恩恵も受ける。インフラ整備で高速道路沿いに物流団地が完成し、自社の物流拠点を確保できた。大山社長は、同構想の主軸である欧州行きの鉄道輸送にも「コスト面など空路や海路と違うメリットがある」と関心を示す。

<需要を取り込む>
 02年に中国進出した新潟県長岡市の北越電研。上海市に電子制御盤の製造工場を建て、中国市場を生き抜いてきた。現地で暮らす平石耕三会長(67)は「経済成長は日本よりはるかに大きい。現地で素早く生産した方が、この巨大な需要を取り込める」と進出の意義を強調する。
 和食人気の高まりを背景に、農産品や加工品の取引拡大に積極的な東北の自治体も目立つ。上海市など大都市では和食の専門店が急増。マンション建設や道路の高架化、地下鉄整備が進む長春市やハルビン市など地方都市部にも浸透する。
 ハルビン市の山形県事務所は、同市で毎年6月にある大型国際商談会で山形の食材を売り込んできた。大門明所長(37)は「日本酒やおいしい米の需要は高い」と手応えを語る。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)の田島英樹中国北アジア課課長補佐(41)は「企業進出の勢いは一段落しているが、所得増加で生活様式が変わり、消費市場としての魅力は高まっている」と分析する。

<高まる不協和音>
 ただ、急成長には陰りが見え、領土を巡る日中政府間の不協和音は高まる。
 11年まで年10%前後の伸び率だった中国の国内総生産(GDP)=?=は15年、6.9%に失速。進出企業の中には、事業を見直す所も出ている。
 上海市に現地事務所を置く宮城県の企業関係者は「経済の減速を厳しく見る日本企業は多い。尖閣諸島が国有化された12年以降は心理的な不安もあり、縮小や撤退を考える企業は増えている」と言う。

 [中国の国内総生産(GDP)] 2003年から5年連続で10%台の成長を続け、07年にドイツ、10年に日本を抜いて世界2位に浮上した。14年には初めて10兆ドルを超え、日本の2.2倍となった。15年は中国政府が掲げる目標成長率7%を割り込み、16年上期も6.7%と伸び悩んでいる。


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2016年08月15日月曜日


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