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<絹の道と東北経済>官民一体 魅力発信を

上海屈指の観光名所・外灘(バンド)地区からの景色を楽しむ中国人観光客ら。東北の認知度を上げ、いかに呼び込むかが課題となっている

◎対中交流のあした(下)観光振興

 「来年は吉林省と宮城県の友好提携30周年。双方の努力で一日も早く空路を再開し、友好往来、経済交流を促進したい」

<誘客で復興加速>
 長春市のホテルで、7月下旬にあった今回の訪中記者団への事業説明会。運休が続く仙台−長春線の運航再開に向け、吉林省外事弁公室の鄭剛副主任(48)が力を込めた。
 仙台−長春線は2003年に就航した。東日本大震災で仙台空港が被災し一時運休となった後、11年7月に再開したが、日中関係悪化のあおりで同年10月に再び運休した。
 運航再開は、東北にとっても中国人旅行者増の切り札になる。宮城県国際経済・交流課の担当者は「中国東北部は東北ゆかりの企業が多く、中国人観光客の利用も見込める。双方にメリットがある」と強調する。
 全国の訪日外国人旅行者は、15年に過去最高の1974万人を記録。中国人は499万人に達し、経済成長を背景に前年から倍増した。東北の状況は、外国人延べ宿泊者数でみると59万人。全国の0.9%にとどまった。
 政府は観光振興で被災地の復興を加速しようと、東北での外国人宿泊者を20年に150万人に増やす考え。東北の魅力を発信し、知名度向上を図る。

<不安解消に時間>
 上海市でJTBの関連企業に勤める及川秀昭さん(36)=仙台市出身=は「古里の復興を後押しするため東北を薦めたいが、希望する人は少ない。九州のように一丸となったPRが必要だ」と語り、官民を挙げた新たな一手に期待する。
 福島県は東京電力福島第1原発事故の風評に苦しむ。中国政府は福島への渡航自粛を国民に勧告しており、県上海事務所は「『福島』と聞くだけで顔色が一変する人もいる」と明かす。放射線量や食品の安全性を説明しても、不安解消には時間がかかる。同事務所は「正確な情報発信を続けるしかない」と話す。

<「相互に行き来」>
 日本が中国人旅行者を当て込む一方、中国は日本人旅行者の減少に不満を抱く。10年に370万人を超えた訪中旅行者は15年、249万人に減少。初めて訪日中国人旅行者を下回った。
 上海市旅遊局国際旅遊促進処の李彬誠処長(60)は「一方的に『来て』ではなく、相互に行き来するのが観光交流。国民同士で互いの理解が進めば、きっと日中間の関係改善につながる」と提言する。
 現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」でさらなる成長を期す中国。中国政府が狙う交流人口の拡大は、復興を目指す東北経済にとっても果実をもたらす可能性を秘めている。

[訪日外国人旅行者] 国・地域別で見ると近年は中国が急増している。2015年は499万人で、東日本大震災があった11年の約5倍に増加。2位の韓国(400万人)、3位の台湾(368万人)を抜き、初めてトップとなった。


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2016年08月16日火曜日


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