岩手のニュース

<岩手知事3期目>復興完遂 問われる推進力

岩手県主催の中学生向け勉強会「いわて希望塾」で復興の状況を話す達増知事=7月31日、山田町

 達増拓也岩手県知事(52)が無投票3選されて1年たち、県政運営は間もなく10年目に突入する。堅実な政策手腕は定評があり、政治的駆け引きにもたける。一方で、県庁組織への指導力や時に物議を醸す政治行動を巡り、疑問符を付ける関係者も多い。さまざまな角度から達増流を論じてもらう。(盛岡総局・横山勲)

◎読む語る達増県政(上)ビジョン

<「現場とずれ」>
 達増知事は本年度を東日本大震災からの「本格復興完遂年」と位置付けた。復興を推進力に、3期目を県政運営の充実期につなげる意図がにじむ。
 戸羽太陸前高田市長(51)は、このスローガンにやや違和感を覚えたという。「被災地は市町村ごとに復興度合いが異なる。わが市はまだまだ復興途上。完遂が何を意味するのか見えない」と指摘する。
 市は中心部約130ヘクタールを盛り土でかさ上げし、海抜12メートルの新市街地を整備する。工事完了は2018年度の予定。まちづくりの本格化はまだ見通せない。
 「ハード整備など要所を押さえた政策展開は評価するが、もっと自分の耳で被災地の声を聞くべきだ。現場感覚とのずれは否めない」と提言する。
 震災復興は数十年先まで続く県政課題だ。政策断行の錦の御旗にもなるが、失策はアキレス腱(けん)にもなる。
 県内のみなしを含む仮設住宅の入居者は、いまだ1万7707人(7月末現在)に上る。被災者を支援する陸前高田市のNPO法人「陸前たがだ八起プロジェクト」の蒲生哲理事(53)は「被災者間に格差が生じている。生活再建の見通しが立たない人に置き去り感を抱かせないような施策が必要だ」と求める。
 「人の幸福とは何かを皆で考え、個人と集団の発展が両立する共同体の在り方を追求したい」。昨年11月、知事は県幹部との研修で、やや哲学チックな政策理念を打ち出した。

<幸福指標 導入>
 「岩手コモンウェルス(共同体)構想」。19年度以降の次期県民計画の政策評価指標に県民の「幸福度」を導入する試みだ。4月に指標を検討する有識者会議も発足させた。座長で岩手県立大総合政策部の吉野英岐教授(社会学)は「政策の結果として、住民が幸福になったかを検証すれば、経済指標よりも本質的判断ができる。政策にもメリハリがつく」と評価を与える。
 対照的に野党・自民党の岩崎友一県議(釜石)は「幸福度で政策にどんな実効性を持たせるのか、皆目見当がつかない。理念先行の分かりにくい施策だ」と達増流を批判する。
 県の復興計画は17〜18年度、最終期間に入る。18年度に予定されるJR山田線(宮古−釜石間)の全線復旧や20年度の整備完了が見込まれる三陸沿岸道路などを見据え、復興後の地域ビジョンを練る。
 進展が見えない施策もある。例えば超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致。知事は「復興の象徴」と推進を強調するが、構想浮上から3年以上。国が誘致に消極的な事情はあるにせよ、ここでは知事の「政治力」はいまひとつだ。
 盛岡商工会議所の谷村邦久会頭(68)は「復興後の地域振興は交流人口の拡大が鍵になる。適度なトップダウンがなけば推進力は生まれない」と話す。


関連ページ: 岩手 政治・行政

2016年08月23日火曜日


先頭に戻る