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<リオ五輪>東北勢 偉業の陰に支え

五輪4連覇を達成し、母トシさんの遺影を手渡される伊調選手(下)。その上は姉の千春さん

 歴史的快挙を3競技で見届けた。栄光の瞬間、やり遂げた選手たちの奮闘に感動を覚えたのはもちろんだが、その選手たちにつながる人々の顔が次々と浮かんだ。偉業は決して一人では手にできず、必ずやその陰に支える力があった。
 「(4連覇は)普通の人じゃできないよ。お母さんが守ってくれたのかな」
 レスリング女子58キロ級の伊調馨(いちょうかおり)(ALSOK、八戸市出身)が女子の個人種目で初めて4連覇を達成し、中学まで指導した沢内和興さん(69)が言った。
 すさまじい決勝だった。残り10秒を切り、1−2から逆転。1点差の勝利だった。試合後「自分のレスリングを出したいと思ったり、勝ちにこだわらないといけないかなと思ったり…」。理想と現実のはざまで揺れながら戦い、それでも女王は日本国民が歓喜する結果を出した。惑う彼女のよりどころとなったのは、沢内さんが言ったように2014年に亡くなった母トシさんだった。
 「死んでも勝て」。強気な母は生前、何度も何度も娘にそう言ったという。伊調はその言葉を思い出しながら戦い、「最後も助けてくれた」と感謝した。
 同じ五輪3連覇中でありながら表に出る吉田沙保里に対し、何事も控えめな伊調。メダリスト会見でも「練習はうそをつかない」とぽつりと話した。「今まで以上に近くに感じる」。天を仰ぎながら母と語らう安らぎをそっと胸にしまい込み、決戦のマットに向かう。秘めた闘志とはそうやって培われていくのかもしれない。
 強さは伝わった。
 日本バドミントン界で史上初の金メダルに輝いた女子ダブルスの高橋礼華(あやか)、松友美佐紀組(日本ユニシス、宮城・聖ウルスラ学院英智高出)は前日の伊調の姿を見て逆転優勝につなげた。
 「私たちもできるかも」。強い意志で引っ張る高橋がそう思って決勝に臨み、後輩の松友は静かに従った。世界で一番のコンビネーションの発揮に伊調が影響を与えていた。
 もう一人、ペアの生みの親、聖ウルスラ学院英智高総監督の田所光男さん(65)の気遣いが「タカマツ」を奮い立たせた。鉢巻き姿、観客席で声を張り上げての応援。部活動の厳しい指導者の面影はなかった。「私たちのためにやってくれたことがうれしかった」(高橋)
 1次リーグ開幕前、田所さんは高橋の携帯電話に「自然体で頑張ってください」とメールを送った。松友に送らなかったのは「美佐紀は(考え過ぎて)変に意識しちゃうからね」。どっしりと構える高橋だけに送ったのは2人の性格を知ればこそだった。重みのある励ましだったと言えよう。
 卓球女子団体で銅メダルを手にした福原愛(ANA、仙台市出身)の心の支えは、東日本大震災の被災地の子どもたちと交わした約束だった。「メダルを持って帰ってくる」。3位決定戦後で流した涙に古里仙台への切なる思いを見た。
 人と人がつながっている。地球の裏側で見たドラマに、なぜだか勇気をもらったようで感謝している。(リオデジャネイロ・剣持雄治)


2016年08月23日火曜日


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