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交付金受領後に退社要請 被災農家が業者提訴

国の交付金で整備したビニールハウスの一部=白石市福岡深谷

 東日本大震災で被災した宮城県名取市の農家の男性(76)を役員に招いた同県白石市の農作物生産販売会社「蔵王グリーンファーム」が国の交付金で農業施設を整備した後、男性に退社を求めたとして、トラブルになっていることが23日、関係者への取材で分かった。
 退社を求められたとされる男性は「交付金目当ての誘いだった」と批判。地元での営農再開が難しくなったとして、同社に損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
 宮城県や白石市によると、同社は2011年度、被災者の参加を要件とする「東日本大震災農業生産対策交付金」を受領。国や県から計約1億円の交付金を受け、ビニールハウス132棟や出荷施設を建設した。
 訴えによると、同社幹部が震災直後、知人だった男性を役員に招き入れて事業を立ち上げた。男性は交付金で整備されたハウスを使い、妻や仲間と野菜を栽培し、多い月は約800万円を売り上げたという。
 同社は15年3月、「年齢的に退社する時期だ」「1カ月後に退職して」と明記した「退社願い」を男性方に一方的に送付した。男性は翌日以降、出社しなかったが、報酬はその後も支払われ、会計検査院が事業の完了確認を終えた同年6月以降、支給が止まった。
 県農産園芸環境課によると、交付金で整備した施設は事業を実施した同社の所有となる。県の担当者は「交付金支給の要件に『被災農家の参加』があり、本来は『退社願い』を出すべきではなかった」と言う。
 交付金申請には男性の名義が使われた。男性が居住地の名取市で同様の交付金を申請しても、既に受けた実績があるため、通常は認められないという。
 男性側は「交付金が受けられなければ地元で営農を再開できない」と訴え、今年4月、計約1790万円の損害賠償を求める訴訟を提起した。
 蔵王グリーンファームの幹部は河北新報社の取材に「人助けをしたいという純粋な思いで声を掛け、男性の身分は現在も役員のままだ」と説明。「退社願い」を送ったことについて「経営方針を話し合う場を持ちたいとの趣旨で、実際に退社は求めていない」と話す。

[東日本大震災農業生産対策交付金]被災した農家が営農再開に向けビニールハウスや農業機械を整備する際、国が事業費の2分の1を上限に交付する。都道府県が上積みできる。交付対象は農家5戸以上で組織する団体や農業生産法人など。被災者が半数以上を占めるといった条件がある。


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2016年08月24日水曜日


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