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<復興へのペダル>銀輪の風 牡鹿語り継ぐ

今年5月に始めた無料レンタサイクルの手入れをする目黒さん=石巻市小渕浜

◎ツール・ド・東北2016を前に(2)石巻(下)

<走り応え 十二分>
 石巻市小渕浜の民宿「めぐろ」の2代目、目黒繁明さん(42)は2015年、友人に誘われツール・ド・東北に参加した。
 自転車とは中学、高校の通学で乗って以来、疎遠になっていたが、女川湾などを巡る60キロの「女川・雄勝フォンド」を完走して魅力にすっかり取りつかれた。「自転車で走ることで気付く景色や風が心地よかった。牡鹿半島の自然や景色を楽しむには最適な乗り物だと思った」と振り返る。
 今年のツール・ド・東北では、石巻専修大(石巻市)を発着点に半島を周遊する「牡鹿半島チャレンジグループライド」(100キロ)が新設された。半島の景観と起伏やカーブに富んだ走り応えのあるルートが魅力という。
 「めぐろ」では大会を先取りして、今年5月に無料レンタサイクルのサービスを始めた。「ツール・ド・東北をきっかけに牡鹿半島に自転車観光が根付いてくれたらうれしい」と夢を膨らませる目黒さん。牡鹿地区を巡るコースマップの作製、目黒さん自身がガイドを務めるサイクリングツアーなど、自転車を生かした誘客の青写真を描く。

<現状 じかに見る>
 牡鹿コースには、被災状況や復興の足跡を聞ける4カ所の「語り部ステーション」が設置される。牡鹿地区は観光客に震災の状況を伝える「語り部」のボランティア組織がなく、大会は牡鹿地区の「いま」を知る貴重な機会ともいえる。
 語り部役を務める石巻市鮎川浜の石巻観光協会副会長斎藤富嗣さん(56)によると、牡鹿地区は家族を亡くしたり自宅や漁船を流されたりした被災者が多く、これまで語り部ボランティアを募るような雰囲気はなかったという。
 斎藤さんは「牡鹿の震災をどう伝えていくか真剣に考える時期に来ている」と話し、大会がそのきっかけになればと考えている。
 牡鹿コースは、参加ライダーの期待も高い。今年で3年連続の参加となる栃木県野木町の会社員阿部進さん(59)もその一人。迷わず牡鹿チャレンジグループライドに申し込んだ。
 阿部さんは仙台市出身。小学校の遠足では鮎川港を訪れ、捕鯨船などを見学した。牡鹿コバルトラインが開通した1971年には家族でドライブを楽しんだ大切な思い出もある。「被災状況や復興の様子を自分の目で見られて、さらに語り部の話を聞けるのはとてもありがたい」と心待ちにする。
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 東日本大震災で被災した宮城県沿岸部を自転車で巡る「ツール・ド・東北2016」(河北新報社、ヤフー主催)は9月17、18両日に開催される。大会は今年で4回目を迎え、会場となる石巻、気仙沼、女川、南三陸の2市2町では、まちづくりに自転車を生かそうと取り組みが始まっている。観光振興や外国人旅行者の誘客などに励む現場を訪ねた。(ツール・ド・東北取材班)


2016年08月25日木曜日


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