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<その先へ>帰還村民 安らぐ場に

「カフェ嵐が丘」を営む堀江さん夫妻

◎カフェ経営 堀江安則さん、みどりさん=福島県葛尾村

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が6月12日に解除された福島県葛尾村で、神奈川県厚木市から移住した夫婦が喫茶店を営んでいる。住宅の1階にある店舗は、長年かけて集めたカップや古美術品が異国の雰囲気を醸し出す。二人は「村に帰ってきた人々が一息つける場にしたい」と話す。
 「カフェ嵐が丘」は村役場から1キロ離れた山の中にある。避難指示が解除されても帰還した住民が一部にとどまる村で、唯一の飲食店。堀江安則さん(66)が接客を担当し、妻みどりさん(66)が調理する。水−土曜に店を開き、飲み物やランチ(850円)を提供する。

 自動車会社に勤めていた安則さんは、退職後の田舎暮らしを夢見て全国を回った。山から臨む夕日の美しさやタケノコ狩りができる自然環境にひかれ、7年前に土地を購入。料理教室を開いていたみどりさんの経験を生かし、喫茶店を開こうと考えた。
 定年が迫った2011年2月、みどりさんが先に新居に移った。愛着のあるカップや皿を壁一面に飾り、開店準備を進めていたさなかに東日本大震災が起きた。原発事故で村は全域が避難区域となった。
 みどりさんは震災発生時、通院のため一時、厚木に戻っていた。二人が村に入ったのはその年の5月。食器類は粉々になって散乱していた。みどりさんは一時、食器を見るのも嫌になるほど落ち込んだ。

 三春町のプレハブ仮設住宅に入居し、避難指示解除を待った。「地域の人に親切にしてもらい、村とのつながりもできた」。安則さんは5年に及んだ避難生活を前向きにとらえる。
 準備宿泊が始まった昨年8月、村で暮らし始め、開店準備を本格化させた。今年3月末に開店。食器類は残っていたものや、買い替えた一部を飾り直した。
 避難指示解除後、店を訪れる村民が少しずつ増えている。みどりさんは「仮設住宅で一緒だった人が来てくれるとうれしい」と話す。「タケノコ狩りができないのは残念だが、村人やお客さんとのこれからの付き合いが楽しみ」と安則さん。ようやく始まった田舎暮らしに胸を弾ませる。
(柴崎吉敬)


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2016年08月27日土曜日


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