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山形県「枝豆王国」復権へ奮闘

新たに導入した大型コンバインで加工用枝豆を一挙に刈り取る生産者=8月上旬、山形県庄内町

 東北でコメの転作田を活用した枝豆栽培が広がっている。米価低迷や2018年をめどにした国の生産調整廃止を見据え、農家の複合経営推進に取り組む行政や農協が、市場の潜在需要が高い作物として栽培を促す。産地として知られながら、作付面積が減少傾向だった山形県は5月に推進協議会を設立、「枝豆王国」復権に動きだした。(酒田支局・亀山貴裕)

<作付け2.5倍>
 山形県庄内町で7月末から8月下旬、加工用枝豆が収穫された。「水田作業が減る夏場の作物として枝豆は取り組みやすい」。同町の農家阿部健一さん(62)らのグループは今年、水田や大豆畑だった約20ヘクタールで刈り取り作業を担った。
 枝豆は庄内たがわ農協(鶴岡市)を通してむき豆やペースト状にし、ずんだや総菜の原料として仙台市などの業者に販売する。
 同農協は昨年、ブランド枝豆「だだちゃ豆」の陰に隠れてきた「庄内たがわちゃ豆」の加工用栽培にかじを切った。今年の作付面積は約75ヘクタールで昨年の2.5倍。奥山和樹園芸特産課長は「だだちゃ豆に食味で負けない自信はあるがブランド力で及ばない。戦略を変えて勝負する」と語る。
 山形県はだだちゃ豆を筆頭とする「やまがたブランド」を確立し、現在30億円の年間産出額を全国トップの50億円に押し上げたい考え。県農林水産部の担当者は「食味で定評がある県産枝豆は山形の武器」と強調。県が設立した「山形えだまめ日本一産地化推進協議会」は食味分析を基に栽培マニュアル作りを進める。

<秋田を意識>
 県が意識するのは、水田を集約した「園芸メガ団地」で枝豆生産を急速に伸ばす秋田県の存在だ。秋田では6年前に県や全農が販売戦略会議を設置。コメ以外の収益源を探った結果、「施設投資が抑えられる露地栽培で、機械化による大規模化、人的負担の軽減を図りやすい」(県園芸振興課)枝豆に行き着いた。
 作付面積は09年度の433ヘクタールから15年度は660ヘクタールに拡大。一貫した機械化が奏功し、昨年7〜10月の東京都中央卸売市場への出荷量は全国1位に躍進した。
 仙台市では、沿岸農家が朝採れた枝豆をその日のうちに繁華街の居酒屋に提供している。市などが東日本大震災の復興支援事業として13年度に始め、提供店舗は50を超える。
 転作作物として国の手厚い補助金がある大豆と比べ、枝豆は手間の割に農家の手取りは多いとは言えない。だが「補助金が将来も続く保証はない。売価で採算の合う作物に切り替えていく必要がある」と全農山形の担当者。枝豆シフトの背景には補助金に頼らない農業を目指す意図もある。

<需要開拓を>
 枝豆の国内需要は過去20年間は11万〜12万トンと横ばいで推移し、冷凍品を中心に6割が台湾や中国からの輸入物が占める。国内でも早出し産地の千葉県、「天狗(てんぐ)印枝豆」を擁する群馬県など競合県は多い。
 山形大農学部の江頭宏昌教授(植物遺伝資源学)は「人口減社会に入り、パイの奪い合いでは生き残れない。だだちゃ豆並の良食味で出荷時期が長い品種の開発など、需要開拓に力を入れるべきだ。和食ブームを追い風に輸出も視野に入れてほしい」と指摘する。


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2016年08月28日日曜日


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