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<道しるべ探して>卒原発へ地銀が後押し

風車が立ち並ぶ山形県庄内地方。やまがた新電力の挑戦が始まった

◎とうほく共創 第3部恵み(下)ガリバーに挑む

 鳴り物入りで設立された新会社の本社に、常駐する社員はいなかった。
 地域電力会社「やまがた新電力」(山形市)は、全国初の県主導による電力会社だ。山形県と民間企業18社の共同出資で昨年9月に誕生した。
 県内の太陽光、風力発電所から、一般家庭1万2000世帯分に相当する年間約4800万キロワット時の電力を買い取り、半分を県施設70カ所に供給、残り半分を市場に卸す。
 安定供給のため東北電力からも調達するが、それでも自然エネルギー比率は74%以上。市場に続々参入する新電力会社の中では群を抜く。
 だが−。やまがた新電力総務担当で山形パナソニック事業部長の井上喜男さん(53)は「期待先行という感じ」。県民の熱視線と現状の落差に戸惑っていた。

 「卒原発」に向け、東北電力の金城湯池に割って入る新会社。原発に由来しない電気なら「ぜひわが家でも使ってみたい」と問い合わせが相次いだ。
 ところが、いざふたを開けてみると当面は取扱量が少なく、供給先は公共施設に限られた。期待は瞬く間に落胆へと変わった。
 急ごしらえの地域電力会社がガリバーに放つ最初の一矢がか細いのは、当然と言えば当然。一般家庭や民間企業への供給拡大を将来目標に、自然エネルギーによる発電量を増やすことが今後、最大の課題となる。

 「それを後押しできるのは地方銀行しかない」。山形県で荘内、秋田県で北都の両銀行を傘下に置くフィデアホールディングスの議長を務めた町田睿(さとる)さん(78)が熱く語る。
 欧州で再生可能エネルギー開発の3原則とされる「地元組織」「地元決定」「地元利益」。その鍵を握るのは「地元金融機関」であると看破したのが町田さんだった。
 東京電力福島第1原発事故を踏まえて自然エネルギー開発への関心が高まっていた2012年、秋田市に設立された風力発電会社への融資を決めた。
 経営者や会社ではなく、事業の収益性に信用を置く。「プロジェクトファイナンス」と呼ばれる新たな融資手法はその後、自然エネルギー開発の一つの潮流になっていく。
 「自然エネルギーは一過性のブームじゃない。すさまじい変化の始まりだ」「電力事業にも競争が必要。地域独占は資本主義の死を意味する」。進取の気性に富んだバンカーが、時代の先を読む。


2016年08月28日日曜日


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