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<道しるべ探して>地域の復元力高めよう

枝廣淳子(えだひろ・じゅんこ)1962年、京都市生まれ。東大大学院修士課程修了。専門は環境コミュニケーション。幸せ経済社会研究所長。元米副大統領でノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏の著書「不都合な真実」の翻訳者としても知られる。

◎とうほく共創 第3部恵み/東京都市大環境学部教授 枝廣淳子氏に聞く

 東京電力福島第1原発事故で首都圏の人たちは、初めて自分の家の「コンセントの向こう側」を知り、自分の責任を考えた。悲劇的な方法ではあったが、福島の人たちに迷惑を掛けながら電気を使わせてもらっていたことに気付き、罪悪感を抱くきっかけになった。
 こうして心情的に「脱原発は当然」と考えるようになった人たちに再生可能エネルギーという新しい選択肢を示したのが、東日本大震災後の5年間だった。
 日本は間違いなく再エネの時代に入りかけている。この時間軸が進めば、原発か地球温暖化かという「地獄の選択」を回避できる。
 実際、九州電力では毎日、発電量の10〜30%を再エネで賄うようになった。「ドイツでは再エネ率が30%」と聞いて驚いていた時代が、実は既に私たちの足元で育っている。

 世界の国々が再エネを推進するのは「温暖化を食い止めたい」などという地球市民的発想ではなく、その方が単に経済的だから。
 原発の立地地域が再稼働を求めているのも理屈は同じで、雇用と地域経済を回したいための再稼働推進であって、別に原発そのものが必要だからではない。
 風力発電に積極的で、地域がエネルギーで自立することを国家目標とするデンマークでは、風車の8割以上が地元所有になっている。地元を吹き抜ける風は地元のものであるから地元の利益にするのが当然というお国柄。風車がビュンビュン回る音が、地元の人にはチャリンチャリンとお金が落ちてくる音に聞こえるとか。
 日本にも3.11後、始まった再エネの固定価格買い取り制度(FIT)ができた。だが再エネ発電量を増やすことが目的となり、どこが出資するか、利益がどこに戻るかは二の次だった。その結果、動きの速い大企業に利益を奪われる植民地型になっている。

 震災では、個人も企業も地域もポキッと折れてしまわない「レジリエンス(しなやかな復元力)」が問われた。特に地域レジリエンスでは、エネルギーと食料の外部依存性を下げておくことが大事なポイント。この点で一番折れやすいのは東京、となる。
 私は子ども時代を宮城県柴田町で過ごした。ここでは、地元で消費できるだけの米や野菜を作って売っていた。経済活動は盛んなのだが、域内経済の全体像は膨張することなく常に一定という「定常経済」の状態にあった。
 一方で国全体は成長経済路線を突き進んでいたが、地域経済の中で暮らしている人なら、定常経済の方が実感を持って理解できる経済システムではないだろうか。
 東北は東京に供給する対価として補助金をもらうような関係性を断ち切り、地域の人たちの幸せのためにエネルギーをどれだけ使えるかと発想してほしい。


2016年08月29日月曜日


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