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難病と闘い撮り続けた被災と復興

「ここから眺める松島の風景が気に入っている」とカメラを構える新井さん=7月28日、宮城県七ケ浜町の多聞山

 東日本大震災の被災地を撮影し、巡回写真展を開いてきた長野市のアマチュア写真家新井栄司さん(44)が9月、最終回となる46カ所目の写真展を神戸市で開く。原因不明の腸の病気「クローン病」を患いながら現地に何度も足を運び、シャッターを押し続けた。最終回に向け、宮城県を再訪し「病気と闘う自分の作品を通し、震災に負けないでというメッセージを伝えたい」と訴えた。
 新井さんが撮影先に選んだのは宮城県七ケ浜町。7月28日、多聞山から一望できる被災した日本三景の松島を写した。松島を訪れるのは2012年1月以来。「枯れ木が目立った当時と比べ、緑が多い印象だ」とカメラを構えた。
 写真展は13年2月に始まり、岩手、宮城、福島を中心に開催。今年8、9月は九州を巡り、最終回の神戸市を含め、30都道府県計46会場に上る。「津波被害が予想される地域はほぼ回った」と区切りを付ける。
 最初の一枚は11年9月、陸前高田市の「奇跡の一本松」だった。造園業を営む傍ら、青森県から茨城県の沿岸を軽乗用車で走り、撮影を重ねた。「一度来た場所でも少しずつ復興が進み、景色が変わっている」。被災地入りは30回を数え、展示作品は当初の50点前後から約100点に増えた。
 伝えるのは被災地の惨状だけではない。青空を泳ぐこいのぼり(東松島市)や浜辺に咲く花(気仙沼市大島)など、復興の息吹を感じさせる風景も写真に収めた。桜を前景に、街の移り変わりを毎春捉えた陸前高田市の作品もある。
 17歳の時、約4000人に1人の割合で発症するクローン病と診断された。完治療法はなく、薬の服用と食事に気を付けながら日常生活を送る。北海道の自然に魅せられ、30代前半に写真を始めた。「デジタルでは出せない色合いがある」とフィルムカメラを愛用する。巡回写真展を終えた後も被災地を訪れるという。
 最終回の写真展は9月20日〜10月5日、神戸市中央区の市生涯学習支援センターで開く。入場無料。今年1月、写真集「必ず明日はやって来る 東日本大震災 5年の記憶」を河北新報出版センターから刊行した。


2016年08月29日月曜日


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