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<キラリこの技>食感・外見工夫 ソフト食

衛生管理が徹底されたソフト食の工場。型枠で再成形した食材に、可食プリンター(右手前)で加工を施す
焼き魚やホタテは、皮や貝柱の色合い、質感まで実物にそっくり

◎東北のものづくり(3)ベスト(山形県鶴岡市)

 「食べる喜びを何歳になっても感じてもらいたい」。食事宅配・給食受託事業を展開するベスト(山形県鶴岡市)がそんな思いで開発した介護用ソフト食「まろやか食専科」は、見た目が本物そっくりだ。魚などの食材をペースト状にした後、型枠で成形した。
 きっかけは15年ほど前。高齢者や病院への食事宅配、給食サービスを展開する中、斎藤秀紀社長(65)がある病院で感じた疑問がきっかけだった。
 「自分が何を食べているのか分からなければ、毎日の食事の楽しみ、意欲を失ってしまう」
 かむこと、飲み込むことが難しくなった人に通常、提供されるのは、食材を細かくした刻み食や、ペーストを混ぜ合わせたミキサー食。そんな介護食を変えたいと2006年、畑違いの食品開発に乗り出した。
 素材を生かした風味。舌や歯茎でつぶせる柔らかさと滑らかさを併せ持つ食感。そして見た目。商品化の課題は多かったが、「絶対に需要はある。とにかくいいものを」と、コストより質を追い求めた。
 「健康は食にあり」の社是の下、満足がいく味と食感を求め、配合などに試行錯誤を重ねた。シリコン成形のシリカ高研(鶴岡市)と連携し、安価で耐久性の高い型枠を実現した。可食インクで製品にプリント。焼き魚の皮やホタテの貝柱なども食欲を誘う色合いで忠実に再現した。
 11年に商品化し、現在は食品卸会社などを通じて全国販売する。16年3月期のソフト食の売り上げは全体の12%に当たる1億3000万円。給食受託と食事宅配に並ぶ3本柱に成長した。3年後に3億円に伸ばすビジョンを描く。需要拡大に対応するため、11月末には本社近くに新工場を完成させる。
 アジアや欧米企業から高い評価を受け、海外展開も視野に入ってきた。「おいしく食べれば、元気なお年寄りが増える」と斎藤社長が強調する。

◎ここに感心/高齢化に注目 需要喚起

 「昔はよく『隙間産業』と言われた」。斎藤社長は会社を立ち上げた1985年当時を振り返る。今や高齢者の食を巡る市場は世界的な成長分野になった。労働力不足が課題だが、「高齢者も働きやすい新たな仕組みをつくりたい」とアイデアを練る。地方の高齢化と向き合い、需要を起こす先見性が光る。(村上浩康)


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2016年08月30日火曜日


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