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<特例宿泊>余生、花咲くわが家で

自宅の庭で花の手入れをする田河さん夫妻=1日午後3時40分ごろ、福島県浪江町

 わずかな余生は、花いっぱいのわが家で過ごしたい−。東京電力福島第1原発事故による避難指示が続く福島県浪江町。酒田地区の田河キミさん(74)は1日、ようやく始まった特例宿泊を夫の一良さん(77)と心待ちにしていた。がんで余命を宣告されてから4年。事故後初めて認められた夜間滞在に表情が和らいだ。
 「片付ける荷物がたくさんあってね。年寄りの腰にはきついわ」。弟夫妻と汗を流して動き回るキミさんの口調は明るい。「やっと、わが家で寝られると思うと力が湧く」
 田河さん夫妻は原発事故で福島県二本松市の仮設住宅に避難した。1年後、キミさんはトイレで突然倒れた。がんが肺から全身に転移していた。
 「長くて1年。あとは気持ち次第」。医師からこう告げられ、吹っ切れた。「必ずもう一度、故郷で暮らす」。自分にそう言い聞かせて毎日を送ってきた。
 一良さんの運転で浪江に通い続けた。自宅を片付け、庭の手入れをした。浪江の空気を吸うたび、体調が少しずつ良くなった。気付けば、1年の余命を宣告されてから4年になる。
 庭に昨年から植えている花は100種類以上になった。今はヒマワリに紫色のハナショウガ、赤やピンクのフロックスが咲き誇る。花をめでるのが何よりの楽しみになった。
 特例宿泊が終わる26日以降は福島県南相馬市の災害公営住宅から通う。キミさんは「明日死ぬかもしれない。だからこそ今日を楽しく過ごしたい」と言う。
 一日一日を大切に生きる妻の姿に、一良さんも刺激を受けている。国道114号沿いで営んでいた自転車店は、地震で在庫などが散乱したまま。特例宿泊を利用して片付けを始めようと思う。
 「町は簡単には元通りにならない。それでも、町民が気軽に立ち寄れる場所にしたい」。町が2017年3月を目指す避難指示解除が実現すれば、自転車店を再開させるつもりだ。(福島総局・高橋一樹)


2016年09月02日金曜日


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