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<手腕点検>災害対応で強い指揮力

市内の農業法人などの協定調印式であいさつする佐藤市長=8月31日、栗原市一迫

◎2016宮城の市町村長(8)栗原市 佐藤勇市長

 栗原市は2008年の岩手・宮城内陸地震、東日本大震災と2度の大災害に直面し、大きな被害を受けた。佐藤勇市長(74)はその都度、強い指揮力を発揮。周囲から「有事対応のエキスパート」と呼ばれる。
 東日本大震災では、電話1本で旧知の内閣府参事官に掛け合い、枯渇寸前だった公立病院の燃料を調達。昨年9月の宮城豪雨では、過去の水害の歴史から洪水に見舞われそうな地域を予測し、いち早く排水ポンプを県に追加配備させた。
 東京電力福島第1原発事故で発生した汚染牧草の処分を巡っては、独自の対策に乗り出す。県が焼却処分の姿勢を崩さない中、牧草を発酵させて減容する研究施設を建設。新たな有効活用の可能性を探る。
 行動力の裏に長い政治経験で培った自負がのぞく。

<広い人脈が武器>
 兵庫県出身。故大石武一元環境庁長官の秘書を経て、県議を連続5期務めた。自民党県連幹事長、県議会議長を歴任。03年の県議選で苦杯をなめたが、旧栗原郡10町村の合併に伴う市長選で初代市長に就いた。
 災害時に見せたトップダウンの手法は、平時の市政運営でも貫かれる。「出番を見極め、一気に勝負に持ち込む」(市職員)。トヨタ東日本の部品供給会社4社の誘致も、人脈を武器に自ら動いて得た果実だ。
 佐藤氏は「目標は『日本一暮らしやすい栗原』。そのために大胆な行政改革や企業誘致、子育て支援などの重要施策を着実に進めている」と合併後10年のかじ取りに自信をにじませる。

<頓挫した大事業>
 だが、その姿勢は「ワンマン」「強引」とも取られる。頓挫した市スポーツパーク計画は典型例だ。
 整備の意向は昨年2月の市議会で突然示され、「周囲は寝耳に水」(市議)。発表直後から疑問が出たホッケー場建設こそ見送られたが、巨額な事業費への不安から議会や市民説明会で批判が噴出。市民アンケートでは、「不必要」が「必要」より10ポイント以上多く、計画は撤回に追い込まれた。
 議長経験がある高橋義雄市議(75)は「説明不足。市民が享受できる恩恵を数値で示すなど丁寧に手順を踏むべきだった」と話す。
 「自分の発言は通るとの慢心がないか」と指摘するのは、前議長の石川正運市議(72)。「すべてトップダウンで押し切れる時代ではない。市民ニーズの吸い上げに重きを置くなど、変化が必要だ」と忠告する。
 まちづくりの中核を担う市の大事業が立ち消えになったのは、立地への期待が高まっていた大学医学部誘致計画に続き2度目。佐藤氏に批判的な市民からは「有事は強いが、平時はどうか」との揶揄(やゆ)も聞こえる。
 こうした声に佐藤氏はどう答えるのか。3期目の任期満了まで8カ月弱。市民が言動を注視している。(栗原支局・土屋聡史)


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2016年09月04日日曜日


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