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新人消防士ひたむきに 県消防学校鍛錬の日々

全身の力を振り絞り、ロープ渡りの訓練に取り組む消防学校の学生

 仙台市宮城野区の宮城県消防学校に入校した18〜33歳の127人が、来春の配属に向けて厳しい訓練に励んでいる。志願者は東日本大震災を機に増加傾向で、近年は転職組も目立つ。救急対応の技術や人命救助の心構えなどを学ぶ、新人消防士のひたむきな姿を追った。(報道部・鈴木俊平)

<分単位で宿舎生活>
 8月6、7の両日、県消防学校の授業風景が一般公開された。真夏の強い日差しが照りつける中、高校生ら約500人が救助訓練や施設などを見学した。
 ビルの谷間を想定し、高さ約8メートルに張られた約20メートルのロープ渡りを見守った仙台高2年青沼咲希さん(16)=泉区=は「女性消防士の活躍に勇気が湧いた。遠回りしてでも夢をかなえたい」と目を輝かせた。
 鍛錬の成果を披露する場だったが、中には失敗して落下したり、足がつって続行を断念したりする学生も。「現場では助けられなければ意味がない。住民の信頼には結果で応えろ」。訓練後、教官からの容赦ない言葉を学生たちは真剣な面持ちでかみしめた。
 校内の宿舎で1年間の共同生活を送る学生の毎日は授業や食事、消灯まで分単位で管理されている。土、日曜日は休みだが、毎週月曜日に消防法や救命知識などの試験があり、休日返上で勉強を重ねる。「消防士になりたい」という強い思いが、日々を支える。

<人命救助 強い決意>
 青森県六ケ所村出身の石川晋吾さん(30)は核燃料再処理工場を辞め、2度目の挑戦で夢をかなえた。転機は大震災。大学時代を過ごした仙台に救援物資を運ぶ途中、津波にのまれて亡くなった友人の悲報に接した。「癒えない傷を抱える人を増やしたくない」と新たな道へと踏み出した。
 大衡村出身の堀籠大地さん(28)も、震災をきっかけにした転職組の一人。当時、泉区のガソリンスタンドでアルバイトをし、長蛇の列に殺気立つ住民に向き合った。給油できず、見送ることしかできなかった通院患者も。「目の前の命を救える仕事がしたい」と決意し、合格を果たした。
 採用試験の競争率は約10倍に達する。震災から5年以上たった今も、被災経験を胸に秘めて狭き門を目指す志願者が後を絶たない。
 佐藤久副校長は「団塊世代の大量退職がピークを過ぎて採用数は減りつつあるが震災以降、住民から寄せられる期待は高まっている。多様な役割を担える人材を育てたい」と後進の指導にエネルギーを注ぐ。

[宮城県消防学校] 仙台市宮城野区幸町4丁目にある救急救命の即戦力を育成する機関。学生は基礎教育や技能訓練など1年間の総合プログラムを終了後、仙台市消防局と県内11消防本部に配属される。県消防課のまとめでは、震災前1100〜1200人台だった志願者は12年度1299人、13年度1474人、14年度1285人となっている。


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2016年09月05日月曜日


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