岩手のニュース

<台風12号>避難指示…住民疲労、残る人も

台風12号の接近に備え、孤立集落の住民にヘリコプターでの避難を促す町職員=4日午後1時ごろ、岩手県岩泉町安家松ケ沢

 台風10号の豪雨被害が甚大だった岩手県岩泉町で4日、孤立状態にある集落の住民の避難搬送が始まった。台風12号の接近に備え、町は全域に避難指示を出した。自衛隊のヘリコプターによる孤立集落からの搬送が始まったが、「家にいたい」ととどまる住民もいた。相次ぐ台風に被災者は翻弄(ほんろう)されている。
 同日の避難は安家(あっか)、鼠入(そいり)地区の9集落に住む328人が対象。157人が避難所となった町内の龍泉洞温泉ホテルなどに移った。
 鼠入の林業佐々木公二さん(54)は自宅に大きな被害はなかったが、80代の父と70代の母と共に避難した。「集落に通じる道路の復旧に何年かかるか分からない。高齢の両親がいつまで集団生活をしなければならないのか心配」と避難の長期化を懸念した。
 鼠入の無職男性(58)は「台風が来ると言われ避難した。今は何も考えられず、生活がどうなるのか想像がつかない。町の指示に従って行動するだけ」と疲れ果てた表情を浮かべた。
 町の呼び掛けに応じず、自宅にとどまる住民もいた。同町安家の松ケ沢集落には町職員と自衛隊が入り、23世帯41人にヘリコプターでの避難を促したが、多くの人が家を離れなかった。
 木造2階の住宅で1人暮らしの無職新田耕一朗さん(85)は「台風10号でも家は浸水しなかった。左脚が不自由なので、慣れ親しんだ家でないと安心して生活できない」と残った。
 無職小呂舘利雄さん(71)、静子さん(68)夫妻は「食料は足りている。水も近くの沢で確保できる。家の周りの流木を片付けたい」。病気の父(71)と暮らす会社員鹿糠信幸さん(38)は「荷物をまとめるのが大変で父も嫌がると思う。今日中に決断はできない」と避難指示に困惑した。
 地区会長の中山孝さん(71)は「高齢者ばかりでいったん避難すると、しばらく戻れなくなる恐れがある。残った住民で助け合いながら乗り越えるしかない」と話した。
 町は台風10号接近の際、避難準備情報を出したが、避難勧告は安家地区にしか発令せず被害拡大につながった。伊達勝身町長は「生命の安全を第一に考え、今回は早めに避難指示を出した。大丈夫だと思わず避難してほしい」と強調した。


関連ページ: 岩手 社会

2016年09月05日月曜日


先頭に戻る