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<避難解除1年>楢葉再生の芽 一つ一つ

楢葉まなび館で布草履を作る「わらじ組」のメンバーら。笑い声が絶えない=1日、福島県楢葉町

 東京電力福島第1原発事故で全住民が避難した自治体として初めて、昨年9月5日に避難指示が解除された福島県楢葉町。新たなスタートから1年を迎えた地域は、決して広い歩幅ではないものの、再生へ一歩ずつ前に進む。

<仲間の輪広げる>
 「便秘が治ったのよ」。女性の告白に、どっと笑いが湧く。7月に開設された生涯学習・交流施設「楢葉まなび館」。布草履作りのグループ「わらじ組」が今月1日、帰町者らを対象に教室を開いた。古着を切った布を編み、口も動かす。
 わらじ組は、福島県会津美里町の仮設住宅で結成された。メンバー6人のうち3人が昨秋に帰町。古里でも活動を始めた。代表の高木キヨ子さん(72)は「会津美里で活動する3人もいずれ戻る。仲間の輪を広げたい」と張り切る。
 地域コミュニティーの再構築は、町の大きな課題だ。使われていない小学校校舎を活用した「まなび館」は「心の復興拠点」(松本幸英町長)の役割を担う。
 和布細工や日本舞踊、和太鼓のグループなども利用。藍染め体験は、自分たちが町内で栽培した藍を原料に使う。今夏、盆踊りを復活させた若者グループは、ここで笛や太鼓の練習を積んだ。
 わらじ組の小尾トミ子さん(63)は「いろんな団体が利用するから、誰でも出入りしやすい。みんなが和気あいあいと交流し、元気を発信したい」と話す。

<商売の灯消せず>
 楢葉町が復興拠点として整備する「コンパクトタウン」。地元スーパーの社長根本茂樹さん(54)は今年3月、核となる公設商業施設への出店を決めた。「商売が成り立つのか、全く読めない」中での決断だ。
 事故前は町内に2店舗を展開し、今は仮設商店街にミニスーパーを出す。復興のけん引役を期待する町の要請に応じた。営業損害賠償は実質、2016年度分で終了。安全網はない。
 開業は18年春。設備は補助金で賄われ、賃料も当面免除される。売り場は約650平方メートル。根本さんは1日1000〜1500人の利用が採算ラインとみる。
 現在の帰町者は376世帯681人。18年3月末には、町民の仮設住宅の期限が原則として終わる。帰町の分岐点ともみられているが、「何人が、いつ町に戻るのか、誰にも分からない。商売の戦略は立てられない」のが現状だ。
 根本さんは、スーパーの開店がすぐ帰町につながるとは思っていない。「戻らない理由はさまざま。単純な話ではない」。だが、町に欠かせぬ存在だとの自負はある。
 「父が前身の肉屋を始めたのは、私が生まれた年。50年以上、楢葉で続けてきた商売の灯は消せない」。不安と闘いながら、自らを奮い立たせる。


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2016年09月05日月曜日


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