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<宮城豪雨1年>堤防整備 完了見通せず

宮城豪雨で堤防が決壊した二迫川。濁流が民家の方向に流れ込んだ=2015年9月11日、栗原市築館富上境(県河川課提供)

 栗駒山麓に位置し、勾配が緩やかな平野部を迫三川(さんせん)と呼ばれる迫川、二迫川、三迫川が流れる宮城県栗原市は洪水の常襲地帯だ。治水工事が長年にわたり行われているが、昨年9月の宮城豪雨では二迫川などで堤防が決壊し、床上浸水が相次ぐなど大きな被害に見舞われた。迫川流域の治水事業の今後と市民の備えを取材した。(若柳支局・横山寛、栗原支局・土屋聡史)

◎栗原の治水(上)決壊

<膝まで水に沈む>
 二迫川沿いに自宅がある栗原市鶯沢袋地区の高橋ミツエさん(70)は、眠れない夜を過ごしていた。昨年9月11日未明、たたきつける雨が屋根や窓を揺すぶり続ける。どこからともなく異音も聞こえた。
 トイレに行こうと身を起こしてベッドから床に足を着けようとしたら、ずぶりと膝まで水に沈んだ。驚いてカーテンを開けると、渦巻く濁流が外灯で照らし出された。状況を把握できないまま台所の流しに上り、震えながら朝を待った。
 高橋さんは「自宅敷地に隣接する堤防が決壊したと分かったのは、明るくなってからだった」と表情をこわばらせて振り返る。
 宮城豪雨では二迫川堤防が鶯沢と築館の2カ所、二迫川に合流する芋埣川堤防が一迫で4カ所、栗駒で1カ所決壊。多くの小河川や用水路から水があふれ出して2人が死亡、計301世帯が床上床下浸水した。
 迫三川が合流した先の若柳地区も、住宅や商店が連なる中心部が洪水被害に遭う可能性があった。

<7時間超も突破>
 川の南北を結ぶ若柳大橋付近は川幅が極端に狭く、「若柳狭窄(きょうさく)部」と呼ばれる。大橋付近の観測点では、堤防決壊の恐れがある「計画高水位」を7時間以上にわたって突破した。
 「水が堤防を越えそうだったので急いで避難の準備をした。もっと長く雨が続いていたらと思うと、ぞっとする」。川沿いに住む50代の男性は語る。
 迫三川流域はかねて洪水常襲地帯として知られる。栗駒山(1626メートル)に降った雨は、標高10メートル前後の平野部へ一気に流れ下る。平野部の傾斜は4キロほど下って高低差が1メートル生じる程度と緩やかで、水はけが悪い。住民は常に、洪水と向き合い続けてきた。

<下流から上流に>
 長年、国や県は治水対策に力を入れ、迫三川流域に栗駒、花山、小田、荒砥沢のダム4基を築造。2014年には若柳地区の下流に遊水池の長沼ダム(登米市)が完成した。
 「治水工事は下流から上流に向かって進めるのが原則」と県河川課の担当者。先に上流を整備すると、下流の被害が増大する。長沼ダム完成で若柳狭窄部では、現在の堤防の外側に残されていた古い堤防の取り壊しがようやく始まった。
 迫三川の堤防は現在、5年に1度発生する規模の降雨にしか耐えられない部分もある。県は合流部より上流は10年に1度、下流は30年に1度の降雨規模に対応できるよう整備を進める方針。だが、完了時期は定まっていないのが実情だ。

[迫三川]3河川の総延長は約173キロ。登米市豊里町で旧北上川に合流する。


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2016年09月06日火曜日


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