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<台風10号>道路寸断「いつ帰れるのか」

避難所で疲れを見せる被災者。「家に帰れる見通しが立たないのが一番つらい」と語る=5日午後1時50分ごろ、岩手県岩泉町の岩泉町民会館

 台風10号の豪雨被害が甚大だった岩手県岩泉町では、7カ所の避難所に約471人が身を寄せている。全域に出されていた避難指示は5日解除されたが、孤立状態が解消されていない集落は多く、戻るに戻れない。「しばらく家には帰れないだろう」「いつまで続くか考えたくない」。豪雨被害から6日で1週間。避難生活は長期化が避けられない見通しで、住民たちは疲労の色を濃くしている。
 孤立状態の集落から143人が避難した町内の龍泉洞温泉ホテル。避難指示の解除後、6日以降に希望者がヘリコプターで一時帰宅し、戸締まりなどをして長期の避難に備えるという方針を町職員が説明した。
 同町鼠入(そいり)でブルーベリー農園を営む川上健治さん(65)は「集落につながる道路が壊れている以上、長期の避難は予想していた」と諦めの表情を浮かべた。
 一緒に暮らす母(87)は心臓に持病があり、盛岡市の病院にヘリコプターで搬送された。「仕方がない。仮設住宅への入居を申し込みたい」と意を決するように語った。
 安家(あっか)地区の安家生活改善センターには27人が避難する。安家中1年の下屋敷怜利(れん)さん(13)は自宅へつながる橋が崩落したため、台風10号の接近後は一度も自宅に戻っていない。「夜はなかなか寝付けず、何回も起きてしまう。連絡がついていない友人もいる」と不安を募らせた。
 1人暮らしの無職女性(81)は日中、自宅に戻って流れ込んだ泥をかき出す。元の生活に戻りたいが「年齢を考えると、自宅を諦めて親戚のところに移った方がいいのかもしれない」と葛藤する。
 町役場近くの岩泉町民会館には最多の208人が避難する。米内山千代さん(78)は自宅が床上浸水し、1階部分に土砂や流木が流れ込んだ。「着の身着のまま逃げてきた。家に戻ったところでどうしようもない。我慢するしかない。いつまで続くかなんて考えたくもない」とうなだれる。
 佐々木秀子さん(78)も自宅1階が泥にまみれた。「親戚が片付けをしてくれているが、しばらくは住めない。夜は考え事ばかりで寝苦しい。目が覚めると汗で背中がびっしょり。日に日に疲れがたまる」とため息をついた。
 県は避難所に災害派遣医療チーム(DMAT)をはじめ、医療や福祉の専門家を順次派遣。食事の内容や衛生状況を確かめ、避難者の体調管理に努める。
 町民の避難生活を調査する岩手医大の大塚耕太郎教授(神経精神学)は「生活環境が変わり、不眠傾向にある人が出ている。避難が続けば精神的な支援が必要になる」と指摘する。


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2016年09月06日火曜日


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