宮城のニュース

<宮城豪雨1年>水害教訓 急がれる対策

昨年の宮城豪雨で決壊した堤防の改修工事が進む渋井川=5日、大崎市古川西荒井
渋井川の堤防が決壊し、浸水した大崎市古川西荒井地区で救助される住民=2015年9月11日

 宮城県内を襲った宮城豪雨(関東・東北豪雨)の発生から間もなく1年になる。河川が氾濫し、住宅浸水や幹線道路、農地の冠水に見舞われた地域では、河川の改修や住民への情報伝達の見直しなど、被災を教訓にした取り組みが進む。8月末の台風10号豪雨が東北に甚大な被害をもたらしたように水害の脅威は常にある。急がれる対策の現状をハード、ソフト両面で検証した。(泉支局・北條哲広、加美支局・馬場崇)

<河川改修なお時間>
 大崎市内を流れる鳴瀬川支流の渋井川。堤防3カ所が決壊した河岸では重機が動き、改修工事が進む。
 国と県、流域市町村などでつくる「鳴瀬川等大規模氾濫に関する減災対策協議会」は7月、鳴瀬川など三つの河川と支流の氾濫被害対策をまとめた。2020年度までに川幅の掘削、堤防の強化、赤色灯で水位警報を伝える「簡易アラート」の設置など危機管理基盤の整備に取り組む方針だ。
 ただ全てが完了するにはなお時間が必要。浸水被害を受けた大崎市古川西荒井地区の60代男性は「台風が近づくたびに昨年の記憶がよみがえる。早く安心できる生活を」と訴える。

<拠点機関分散化も>
 宮城県大和町では昨年の豪雨で町役場、警察署、消防本部、公立病院が並ぶ中心部が冠水。重要拠点が孤立し、まひ状態に陥った。
 各機関はこの経験を踏まえ、今年8月に大型台風が相次いで接近した際、車両や大型機材などを別の場所に移す対応を取った。
 拠点の立地自体を分散化する動きも出ている。大和町など周辺4町村で構成する黒川地域行政事務組合は17年度をめどに、事務所を浸水被害のなかった場所に移転させる計画だ。佐野英俊助役は「昨年のような機能まひの事態は避けなければならない」と気を引き締める。

<情報伝達強化図る>
 住宅浸水が約700戸に上った大崎市。8月の大型台風の接近時は3度とも、豪雨ピーク時の前日に、市全域の約5万世帯を対象に避難準備情報を出した。
 市防災安全課は「豪雨が本格化してからでは避難は難しい。早めの情報提供が必要だ」と話す。
 市には苦い教訓がある。昨年の宮城豪雨時、堤防が決壊した渋井川では水位計が故障していて避難勧告や避難指示を出せず、批判にさらされた。
 県も今年5月、渋井川など5河川を「水位周知河川」に追加指定。避難判断水位を見直し、水位計を5カ所に新設した。水位を常時観測し、大雨時に住民避難を促すことができるよう流域自治体に情報を伝える。
 備えにはまだ課題が多い。昨年12月に消防無線をアナログ方式からデジタル方式に切り替えた大和町。デジタル無線機は消防団員の一部にしか配備されておらず、団員からは「無線がある団員から連絡網で電話連絡を受けることになり、時間のロスだ」と不安視する声が上がる。
 6日で発生1週間となった台風10号豪雨の被災地では、情報共有と伝達の不備が取り沙汰されている。大和町の浅野元・町長は「ハード対策の完了を待つ間も、(段階的な防災情報提供など)ソフト面の充実へ一層の対策強化を図る」と強調した。

[宮城豪雨]2015年9月10日夜から11日未明にかけて発生。宮城県内各地で河川の氾濫や堤防の決壊が相次ぎ、栗原市で2人が亡くなった。住宅被害は全壊1棟、半壊480棟、一部損壊365棟、床上浸水179棟。宮城県内の被害額は約306億円に上った。


関連ページ: 宮城 政治・行政

2016年09月07日水曜日


先頭に戻る