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<震災5年半>凍土壁 効果確認できず

山側に設置した凍土遮水壁の配管に冷却材を流すため、バルブを開ける作業員=6月2日(東京電力提供)

 東京電力福島第1原発は未曽有の事故発生から5年半を迎える。放射能汚染水の発生を抑える主要な対策は出そろったものの、「切り札」とされる凍土遮水壁は効果を確認できていない。凍土壁が機能しなければ、最難関である溶融燃料(燃料デブリ)の取り出しをはじめとする廃炉工程に大きな支障が生じる恐れがある。
 「遮水能力が高いという東電の主張はほとんど破綻している」。8月中旬に都内であった原子力規制委員会の検討会で、凍土壁の実効性を疑問視する意見が外部有識者から上がった。
 1〜4号機の周囲1.5キロの範囲にある地盤を凍らせる凍土壁は3月末に稼働。効果を発揮すれば建屋への流入量は1日200トン前後から100トン以下に減ると見込まれている。
 これまでに海側で99%、山側で91%が0度以下になったが、地下水の流れが速い一部では凍っていない。8月の台風の影響で氷が溶けた場所もあり、東電はセメントや薬剤を充填(じゅうてん)する追加工事を続けている。
 凍土壁の内側と外側で水位差が発生していることから、東電は「効果が表れ始めている」とみるが、建屋への地下水流入量に明確な変化は表れていない。
 8月の流入量は1日290トンで、凍結前に比べて逆に100トン増えた。岸壁近くの井戸からくみ上げ、建屋に戻す地下水の量も想定を上回ったままだ。
 第1原発では、敷地に降った雨水が地中にしみこみ、地下水となって海側に流れている。地下水は配管の隙間などから建屋地下に浸透し、滞留水と混じり合って新たな汚染水が発生する。東電はこれまで、上流で地下水をくみ上げ、浄化後に海に流す「サブドレン」や、護岸からの汚染水流出を防ぐ「海側遮水壁」などの対策を取ってきた。
 東電福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は8月25日の記者会見で「9月中には凍土壁がどういう状況か報告できる」と述べ、近く効果を確認できるとの見通しを示した。
 多核種除去設備「ALPS」でもトリチウムは取り除けず、汚染水は当面、地上タンクにため続けなければならない。廃炉の「本丸」であるデブリ取り出しも、建屋の地下水位の低下が前提条件だ。
 凍土壁の建設には350億円もの国費が投入されている。仮に地下水の流入抑制という効果が発揮されなければ、「切り札」に代わる抜本的な対策の検討が迫られることになる。


2016年09月10日土曜日


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