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<福島第1>溶融燃料 つかめぬ詳細

 事故発生から5年半を迎える東京電力福島第1原発では、凍土遮水壁などによる汚染水対策と併せ、1〜3号機で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しという廃炉工程最大の難関が待ち受ける。東電は2021年12月までの取り出し着手を目指すが、原子炉内部の様子がようやく見え始めた段階で、状況の把握すら決して容易ではない。

 デブリでは7月末、2号機に関する調査結果がまとまった。物質を透過する性質のある宇宙線の一種「ミュー粒子」で調べたところ、大半が原子炉の圧力容器下部にとどまっている可能性が示された。大部分が格納容器下部に溶け落ちたとみられる1号機とは異なっていた。
 廃炉に向けた重要な手掛かりと期待されるが、デブリの状態や分布状況の確認には、さらなる調査が不可欠。東電は年明けに、カメラ付き遠隔操作ロボットを格納容器に入れる見通しだ。
 2号機のロボット調査は昨年8月に実施予定だったが、投入口となる配管貫通部周辺の除染が難航し延期した。貫通部床面のコンクリートを削って線量を下げることにしたものの、今度は配管自体の線量が高いことが判明。新たな遮蔽(しゃへい)体を開発し、被ばく低減を図る方法に転換するなど試行錯誤が続いている。
 1号機は昨年、ロボット投入に成功したが、デブリを撮影できず、東電は新たな調査を計画している。3号機のロボット調査時期は未定だ。
 政府と東電は各号機について、どの場所からデブリを取り出すかといった手順や工法などを、来年夏ごろをめどに絞り込む方針。工法は一つではなく、格納容器を水で満たす「冠水工法」や、水を張らない「気中工法」で上部、側面から取り出す方法を組み合わせる方向で検討している。
 使用済み核燃料プールに残る燃料の取り出しに向けた準備も進む。3号機は17年度の作業開始が目標で、今年5〜6月には、建屋に設置するカバーを組み立てる訓練が行われた。
 20年度の開始を目指す1号機では昨年10月、屋根パネルの撤去が完了。壁パネルの撤去も近く始まる予定だ。

 汚染水対策と廃炉作業の現場では作業ミスや設備トラブルも起きている。今年3月には、無許可で切断した配管から汚染水約5トンが建屋内に漏れた。6月には構内で停電が発生し、遮水壁の一部冷却装置の運転などが中断した。
 廃炉を巡っては7月、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が公表した戦略プランで、デブリを取り出さず建屋をコンクリートで覆う「石棺」に初めて言及。福島県などの猛烈な抗議を受け、「石棺」の文言を削除する事態に至っており、東電や関係機関と地元との信頼関係構築がより重要になっている。

<東京電力福島第1原発事故>2011年3月11日の東日本大震災による地震と津波で、福島第1原発の原子炉6基のうち1〜5号機で全交流電源を喪失し、原子炉や使用済み核燃料プールの冷却ができなくなった。1〜3号機で炉心溶融が起き、1、3、4号機の原子炉建屋が水素爆発した。東電は大気中に放出された放射性物質の量が11年3月だけで90万テラベクレル(テラは1兆)に上ると試算。事故の深刻度は国際評価尺度(INES)でチェルノブイリ原発事故と同じ史上最悪の「レベル7」とされた。


2016年09月10日土曜日


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