広域のニュース

<南海トラフ>津波時の観光客の避難誘導検証

観光船から下り、高台を目指して避難を始める参加者
誘導役と観光客役に分かれて避難訓練に臨んだ
避難の途中、観光客役(中央)が負傷したと見立てて介助する場面も

 東日本大震災の教訓を今後に生かすため、河北新報社は3日、防災・減災ワークショップ「むすび塾」を兵庫県南あわじ市福良(ふくら)地区で開いた。神戸新聞社(神戸市)との共催で通算58回目。行楽地での観光客の安全確保をテーマに津波避難訓練を実施し、土地勘のない人をどう適切に避難誘導するかについて議論した。

 訓練は、紀伊半島沖から四国沖の「南海トラフ」を震源にマグニチュード9.0の巨大地震が発生し最大震度7を観測、大津波警報が出たとの想定。地元の観光関係者や大学生に岩手、宮城両県の東日本大震災の語り部3人が加わり、計約50人が臨んだ。
 参加者は2班に分かれて行動。鳴門海峡の渦潮見学を終えて福良港に戻った観光船と、同港近くにある淡路人形浄瑠璃の専用劇場「淡路人形座」から、それぞれ避難場所を目指した。
 淡路人形座では、大津波警報が出ると、坂東千秋支配人(53)が「津波到達まで1時間弱ある。安全な高台に誘導するので、落ち着いてお待ちください」とアナウンス。座員が劇場内や駐車場の安全を確認した後、歩いて避難を始めた。
 避難場所までは、先導役とフォロー役が観光客役を挟むようにして移動。橋の崩落や建物の倒壊で道がふさがれた事態を想定し、迂回(うかい)したり避難先を変更したりしながら、300メートル離れた高台にある福良八幡神社に約30分で着いた。
 観光船を出発した訓練では、運航会社「ジョイポート南淡路」の社員が赤いビブスを着用し、観光客役を引率して約1キロ先にある一時避難場所「福良口」に向かった。
 途中、「車で逃げたい」「スマホを忘れたので取りに戻りたい」と訴える観光客役を説得するなど、予想されるハプニングへの対応も検証した。観光客役の学生は「避難場所に関する情報が少なく、津波到達までに無事避難できるのか不安」と話した。
 むすび塾があった3日は福良地区の22自治会主催による津波避難訓練もあり、約460人が参加。地域全体で避難手順を確認した。


<南あわじ市福良地区/年間88万人が来訪>
 南あわじ市福良地区は淡路島の南端にあり、福良湾に面する。人口約5100、世帯数約2400。年間88万人以上の行楽客が訪れる島屈指の観光拠点だ。
 集客のメインは鳴門海峡の渦潮見学クルーズ。春と秋の大潮には世界最大級の直径20メートルもの巨大な渦潮が楽しめる。世界自然遺産への登録運動も盛り上がっている。
 500年の伝統を誇る国の重要無形民俗文化財「淡路人形浄瑠璃」も人気で、専用劇場「淡路人形座」には国内外から観客が訪れる。
 兵庫県の想定によると、南海トラフ巨大地震が起きると福良地区には地震から58分後に兵庫県内最大の8.1メートルの津波が押し寄せる。被害は福良地区を中心に市全体で死者1774人、全壊1万1260戸に上る見込みだ。
 市や福良町づくり推進協議会は「日本一の津波防災の町」を掲げ、夜間や早朝に避難訓練を実施したり、夜でも避難路を明るく照らす太陽光発電式の誘導灯を設置したりして対策に力を入れる。
 地区中心部は古い住宅と店舗が密集し、建物の耐震対策や避難路の確保が課題となっている。


2016年09月11日日曜日


先頭に戻る