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<伊調国民栄誉賞>八戸の指導力 資質伸ばす

伊調選手が育った八戸クラブで練習する児童ら=八戸市武道館

 国民栄誉賞受賞が13日に決まったレスリング女子の伊調馨選手(32)=ALSOK=が五輪4連覇を達成した背景には、地元の青森県八戸市で長年にわたって後進を指導してきた関係者の努力がある。レスリングが盛んな地域で、指導者と素質を持った選手が出会い、偉業達成の礎を築いた。
 「青森県は昔からレスリングや卓球など室内スポーツが強かった。東北勢の粘り強い気質が競技に向いていたのだろう」。県レスリング協会元会長の橋本精二さん(77)は、八戸で競技普及に努めた一人だ。
 慶応大で競技を始めて国際大会にも出場した。当時日本協会会長で「日本レスリングの父」と呼ばれた故八田一朗氏と親交があり、「五輪で金メダルを取る人材を育てろ」との言葉に奮起し1974年、八戸にレスリング教室を開設した。
 70年代後半から80年代にかけて、光星学院高(現八戸学院光星高)などが全国大会で優勝を重ねた。市は81年、武道館に専用のレスリング場を整備し普及を後押しした。
 橋本さんの教室は「八戸クラブ」となり、伊調選手も3歳から武道館に通った。当時指導した沢内和興会長(69)は今も小・中学生約50人に基礎を教える。「練習は厳しいが、みんな好きだから通う」と言う。
 少子化でもクラブに通う子どもの数は変わっていない。地元関係者は「場所や指導者の環境が整い、昔の選手が保護者となり競技の裾野が広がった。目標となる選手が身近にいるのも強み」と口をそろえる。
 2000年以降、東北勢のレスリング五輪メダリスト4人は全員が青森県南部出身者だ。伊調選手と姉千春さんは八戸クラブ、小原日登美さんと太田忍選手はレスリング教室「八戸キッズ」で競技を始めた。指導者では吉田沙保里選手の父栄勝さんが八戸出身だった。
 先輩たちの活躍は後輩の励みになる。八戸クラブに通って4年目の小学3年松田叶夢(かのん)さん(8)は今夏の全国大会で2位。「五輪の金メダルが夢」と話す。コーチ4年目の畑中友海さん(29)は同クラブ出身で、伊調姉妹の背中を追い続けた。「私はレスリングに育ててもらった。沢内さんが引退してもこのクラブが続くよう貢献したい」と誓う。
 「昔と違い八戸は強くない」。県レスリング協会会長でもある沢内さんはこう分析する。指導者は全国各地にいるため、八戸から他県の強豪校に進むケースも増えた。それでも八戸が有利なのは、先輩の面倒見が良い点だ。伊調選手は地元に戻ればクラブの練習に必ず顔を出す。
 沢内さんは「県協会としては中・高校女子の合宿に伊調姉妹を招きたい。自分が選手として五輪に出られなかった分、五輪に出られる子を育てたい」。視線は常に将来を見据えている。


2016年09月14日水曜日


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