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<台風10号>濁流が牛さらう 畜産被害深刻

無事だった子牛と川原さん。豪雨は畜産農家に深刻な被害をもたらした=9日、岩手県岩泉町

 台風10号豪雨が直撃した岩手県岩泉町で、基幹産業の畜産業の被害が拡大している。県によると、牛舎が浸水して牛が死んだり、飼料となるトウモロコシ畑に土砂が流入するなどの打撃を受けた。豪雨から2週間たっても被害の全容は把握し切れておらず、県が調査を急いでいる。
 町中心部に近い尼額(あまびたい)地区で黒毛和牛の飼育と農業を営む川原優さん(67)は、小本川の氾濫で自宅や牛舎が被災した。豪雨があった8月30日夜、一家は近くの公民館などへ避難したが、川原さんだけは牛の親子10頭が心配で離れなかった。
 川が急激に増水し、濁流が押し寄せた。牛舎に面し、周囲より高い場所にある国道455号に駆け上がった。「牛たちは首に縄が付いていたが、流れが激しく体は浮いていた。どうしてやることもできなかった」と振り返る。
 翌朝に戻ると、2頭が死んでおり、別の2頭は流された。子牛1頭はけがをして立つことができず、数日後に力尽きた。家族で餌をやり、大事に育ててきた牛たちだった。
 トウモロコシ畑は浸水を免れたが、約30アールの水田は泥水に覆われ、農機や肥料は駄目になった。10個以上あった牧草ロールも残ったのは1個だけという。
 県は町内の畜産農家151戸を訪問し、被害をまとめている。12日までに119戸を調査した。4戸で牛舎が倒壊し、45戸でトウモロコシ畑への土砂流入があった。牧草地の浸水は31戸で、農業用機械の水没は25戸だった。
 道路寸断で生乳の集荷ができず、同町など8市町村で120トンが廃棄された。判明している被害額は、同町や葛巻町などで流失した牧草ロール約1000の355万円だけで、今後大幅に増える見通しだ。
 川原さん宅は床上約1メートルまで水に漬かった。家財道具や冷蔵庫は流された。親戚などの支援を受け、自宅2階で暮らす。川原さんは「もう今年の作物は無理だ」とうなだれた。
 紺野由夫県農林水産部長は「道路寸断で被害実態の調査が思うように進んでいない。一日も早くニーズをまとめて復旧に向けた支援態勢を整えたい」と話す。


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2016年09月14日水曜日


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