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<原発事故>調剤薬局不在 医療復興の壁

休業したままの調剤薬局。一部病院が再開しても、薬の提供体制は追い付かない=南相馬市小高区

 東京電力福島第1原発事故による住民避難を強いられた福島県内の自治体で、調剤薬局の不在が課題になりつつある。事業者の再開や進出が見込めない上、法規制もあって公的なサービス提供が難しいからだ。地域では公設施設による運営を検討する動きも出ている。(南相馬支局・斎藤秀之)

 7月に避難指示が解除された南相馬市小高区。市立小高病院と二つの民間クリニックが再開している。原発事故前に4店あった調剤薬局はいずれも再開の見通しが立たず、一部の患者は区域外の店舗で薬を受け取っている。

<市場規模ネック>
 市内で避難生活を続ける渡部義綱さん(85)は定期的に小高のクリニックに通う。「いずれは戻るつもり。地元で診察から薬の入手まで完結できるようにしてほしい」と願う。
 域内の住民は1000人に満たない。相馬薬剤師会の八牧将彦会長は「市場規模が最大のネック。大手に出店を働き掛けても色よい返事はない」と話す。
 他の被災自治体も状況は同じだ。
 楢葉町では2店あった薬局の休止が続く。昨年秋から帰還が進みつつあるものの、長い避難生活で経営者が移住するなどし、事故前の状況に戻るのは難しいとみられる。

<公的支援に規制>
 「医薬分業」に伴い、多くの医療機関は処方箋を出すだけにとどめている。病院近くで処方できなければ患者の負担は大きい。公的支援策を求める声も上がるが、厳しい規制が自治体の手足を縛る。
 例えば宅配。調剤薬の提供には薬剤師による服薬指導や副作用の説明が必要となり、配送業者に委託できない。公的医療機関に調剤機能を集約しようにも、他の病院が出した処方箋に対応するのは許されない。医師法などに抵触する恐れがあるためだ。
 南相馬市健康づくり課は「(規制を緩める)特別法などがなければ改善は望めない」と強調。国に柔軟な対応を働き掛ける一方、公設民営型の薬局運営も視野に対策を探る。
 急速な高齢化が見込まれる原発被災地にとって、薬局はライフラインの一つ。調剤、市販薬の販売を担う拠点の有無は、地域再生の行方を左右しかねない。
 飯舘村は9月、診療所を再オープンさせた。ただ地元の薬局は再開しておらず、調剤は域外頼み。村は来春の避難指示解除を予定しているが、住民が手軽に薬を入手できない事態も想定される。
 県相双保健福祉事務所は「原発被災地はもともと医療基盤が弱い地域。安心して帰還してもらえるよう、自治体と協力して対応策を構築したい」(医療薬事課)と説明する。


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2016年09月15日木曜日


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