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<原発避難>増す負担 住宅無償提供の延長を

自主避難者らが集まった「住宅支援の延長を求める会」の発足式=4日、山形市

 東京電力福島第1原発事故に伴う自主避難者は東日本大震災から5年半がたった今なお7000世帯、1万8000人(福島県調べ)に上る。福島県は2017年3月で住宅無償提供を打ち切る方針で、当事者たちは今後の生活に不安を募らせる。隣接する山形県では最多の避難者を抱える山形市と、米沢市の議会が方針撤回を求める請願を採択し、避難者と支援者らが組織を立ち上げ、理解を求める。(米沢支局・相原研也、山形総局・阿部萌、福島総局・高橋一樹)

<「一方的な通告」>
 「母の願いはただひとつ、子どもを守りたい。そのためにもう少し山形で子育てさせてください。どうか住宅支援の延長をお願いします」。4日、山形市で開かれた「住宅支援の延長を求める会」の発足式。原発事故当時、3歳の娘と福島市から山形市に母子避難したパート従業員の女性(42)が切々と訴えた。
 長距離通勤、母子避難、二重生活…。自主避難者の環境はさまざまだが、避難生活で家計の負担が増す中、住宅無償提供は大きな支えになる。中には貯金を取り崩しながら生活する家庭もあり、切実な問題だ。
 福島県は2015年6月に打ち切り方針を示し、各地で説明会や戸別訪問を重ねてきた。「必要なプロセスは経てきた」というのが県の説明。福島県内で暮らす人々の間には避難生活者への支援に冷ややかな見方が少なからずあるのも事実だ。
 これに対し、多くの避難者は「納得のいく説明が全くなされず、一方的な通告にすぎない」と捉える。

<全会一致で採択>
 今年7月、延長を求める会が発足に向けて動き出した。それに先立ち、米沢、山形両市議会が6月定例会で、打ち切り方針の撤回を求める請願を全会一致で採択した。請願者の一人、武田徹さん(75)は「まさか全議員が共感してくれるとは思っていなかった。議会で私たちの声が認められた意味は大きい」と話す。
 それに応える形で、8月に入り、中川勝米沢市長が定例記者会見で賛意を示すと、吉村美栄子山形県知事は、内堀雅雄福島県知事に無償提供の延長検討を直接要求。山形県独自の支援策として県職員公舎約50戸を自主避難者に対して無償提供する方針も示した。

<特別支援法 必要>
 延長を求める会の井上肇代表は、直接訴えるため内堀知事に面会を求めるが、実現できずにいる。
 福島県生活拠点課の新妻勝幸主幹兼副課長は「これまで組織として丁寧に説明しており、避難者と避難していない人とのバランスを考え、家賃補助や引っ越し補助などの支援を打ち出し、見直しも図ってきた。知事が出て行っても同じ話になるのなら会う意味がない」と説明する。
 延長を求める会の趣旨に賛同し、集まった署名は約1500人。南陽市や鶴岡市など山形県内10市議会と4町議会の9月定例会にも請願が提出されている。
 原発被害救済山形弁護団事務局長の外塚功弁護士は「支援が複数年にまたがらないと、子どものことを含め先の計画が立てられない」と指摘。「災害救助法の枠内で1年ごとに延長してきたことにそもそも無理がある。特別支援の法律をつくるべきだ」と唱える。


2016年09月15日木曜日


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